梨美菜・ヒロシの憧れ

岩田へいきち

梨美菜・ヒロシの憧れ


「ねえ、梨美菜。梨美菜の憧れのバドミントン選手とかいるの?」


「う〜ん、お姉ちゃんかな?」


「ああ、ぼくと一緒じゃん」


「えっ? ヒロシ、バドミントンするの? 興味あるの」


 ここは、梨美菜が県外のバドミントンの強豪高校へ通うために住んでいるアパート。ぼく、ヒロシは、何故か家政夫となって、潜り込んでいる。最初は、姉の樹菜を一流のバドミントン選手にすることとそれにどうにかして関わって樹菜と一緒に暮らす方法はないかと考えた必殺技のつもりだったが、これがママの協力もあって、思った以上に上手くいき、梨美菜も続けてこのアパートへやって来た。樹菜は、昨年の春から同じ県内にある企業の一流バドミントンクラブに入部してクラブの寮にも住んでいるからもう梨美菜と2人きりである。



「そりゃ、樹菜や梨美菜がやってるスポーツだから興味はあるさ。でも自分では、若い頃でも出来なかった。色々スポーツやったけど、バドミントンは、大学の先生に勝てなかった。なんてせこいスポーツだと諦めた。その頃は、速さや強さに対抗するのがスポーツだと思ってたんだね。20歳そこらのぼくが40過ぎのおじさんに負けるのは、おかしい。そんな、せこいところにはこっちは打ち込まないし、せこいところを攻めてくるスポーツだったらしたくないなと思っちゃったんだね。ぼくも若かった。今なら、速いシャトル、遅いシャトル、せこい落ち方をするシャトル全て含めて、しかも速さはスポーツ最速。幅広くて奥も深いスポーツだって分かる。そんなスポーツをこなしてる樹菜や梨美菜に憧れるよ」


「そうなんだ。自分は、やらないけど憧れるってことね。


「うん」


「あ〜、やなんか怪しい。スポーツの種類関係無しに樹菜に憧れてるんじゃない? 例えば、樹菜が卓球やってたら卓球をこなしてる樹菜に憧れたんじゃない?」


「いやいや、梨美菜にも憧れたよ。でも、卓球も諦めたスポーツの1つだね」


「じゃさあ、バドミントンをやってる樹菜と卓球をやってる梨美菜がいたらどっちに憧れる?」


「う〜ん、バドミントンの方が少し好きかな?」


「ほら〜やっぱり樹菜なんだ」


「いや、梨美菜の卓球も全力で応援するよ」


「嘘ばっかりヒロシの嘘つき。ヒロシが樹菜のこと好きなの知ってるんだからね」


「ごめん、ごめん。嘘ついた。ヒロシは、テニスをやってるママにずっと憧れてました」


「ママ……」



終わり

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梨美菜・ヒロシの憧れ 岩田へいきち @iwatahei

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