妖精の卵
浬由有 杳
KAC2025お題「妖精」
何から話したらいいのかな?
そんな顔しないで。オジサンにだけ特別に話してあげるんだから、妖精のこと。ゲームくれたお礼だよ。これ、ずっと欲しかったんだ。父さん、ケチでさ。ゲームするより外で遊べって言うの。こんな何もない所で何して遊べっての?友達だっていないのに。別にいいけどさ。マリオもスマブラも知らない奴らなんて。
『不景気』のせいで、父さん、首になったんだ。だから仕方なく
そうそう、妖精の話だったよね。わざわざ取材に来たんだもんね?
ね、ここ、けっこういるでしょ?
きれいだよね?身体が透き通ってて、両側に銀の羽。丸い頭に猫耳と大きな金色の目が可愛い。えっと、クリオネ?あれにちょっと似てると思わない?あれよりずっと大きいけど。『流氷の天使』って呼ばれてるんだよね、クリオネって。前にテレビで見た。あれは海の中を羽ばたくように泳ぐけど、こいつらは本当に飛べるんだ。
水生じゃない、陸の妖精の一種なんだ、きっと。
半年くらい前?流れ星がたくさん落ちた夜。あの時に拾ったんだ。庭で。キラキラ光る卵。
父さんに見せてあげようと思ったんだ。父さん、あの頃、お酒飲んで怒ってばっかだったから。機嫌がよくなるかなって。
とりあえず、
子猫みたいな目が僕を見てた。
驚いたよ。まさか妖精の卵だったなんて。
そっと触れたら、肩に乗ってきて。そう、こんなふうに。それからね、キスしてくれたんだ。口と口を合わせる、大人のキスだよ。喉に温かなモノが流れ込んできて、お腹がいっぱいになって。とっても満たされた感じがして。
僕、わかったんだ。妖精のキスはみんなを幸せにしてくれる魔法だって。
父さんも、おじいちゃんも、村のみんなも。ね、笑ってるだろ?
おじいちゃんなんて、ずっと寝たきりだったのに。
卵を吐き出した時は、もっといい気分になるんだ。口からポコリってね。胸がすっきりして最高!。
大丈夫。怖くないよ。
オジサンたちにも魔法を分けてあげる。
妖精の卵 浬由有 杳 @HarukaRiyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます