なぁ

@ITUKI_MADOKA

なぁ……

「なぁ、話したいことがあるんだけど、いい?」


「ん、何だ?突然だな。話してみろよ」


「あぁ、僕実はさ、妖精が見えるんだよ」


「……は?」


「だから、妖精だよ妖精、Y・O・S・E・I、妖精!」


「いやわかるよ。てか、ほんとにどうしたんだよ頭おかしくなったのか?」


「何言ってんだよ。どこからどう見ても健康だろ。目腐ってんの?」


「こっちのセリフだけどな。まぁ、お前はそういう冗談言うようなやつじゃないか」


「ふっ、君ならわかってくれると思ってたぜ親友!信じられるのはやっぱ心の友ってね!」


「うわっ!肩組むな!近いよ!」


「なんだよ〜いいじゃんかよ〜!」


「あぁもう!しつこい!はぁ……で、なんだ?妖精だっけか?」


「あぁそうだ。嬉しすぎて本題を忘れるところだった」


「いや忘れるなよ、お前から話し出したんだから」


「へへっ照れるよぉ」


「褒めてねぇよ。その妖精?ってのはいつ頃から見えてたんだ?」


「生まれて間もない頃かな。赤ん坊の時、どこか変なところを見ることが多かったって親が言ってた。そこにいるのが当たり前だし、見えるのが普通だって思ってたんだけど、みんな見えないんだよな」


 「あぁ、残念ながらな。見えても得になることなんて想像できないが。で、妖精はどんなやつなんだ?」


「そうだなぁ、僕たちとはかなり姿形は似てるな」


「まぁそうだよな。俺もそういう噂は聞いたことある」


「で、羽は生えてない」


「あれ?生えてないのか?」


「生えてないよ。あんな姿でどうやって生活してるのかわからないけどな」


「へぇ、不便なことないのか。小さな体で羽がないとなると、かなりめんどうじゃないか」


「あぁ、その代わりといっちゃあなんだけど、種類によるかもだけど妖精はまぁまぁでかいよ」


「そうなのか。なら、そういうもんか。他には特徴はないのか?」


「特徴かぁ……特徴と言っても、僕たちと姿形はほとんど同じだからそんなに……あ、なんか言語話してるよ」


「そりゃ、あいつらも一応生物で知識があるんだから言葉くらい話すだろ」


「いや、でも話してるところをたま〜に聞いたりするけど、何喋ってるのかわからないんだよね」


「お前が馬鹿なだけじゃなくてか?」


「失礼な!本当にわかんないんだよ。近づいても呪文みたいなのをブツブツと呟いてるだけで、何言ってるのかわかんないんだから!」


「そうなのか……」


「あ、あとそこらへんブラブラ歩いてたり、くねくねしてたり、あと高速で動き回るやつとかもよく見るな」


「……ふ〜ん…………」


「ん?どうした?」


「いや、話して聞いてるとさ、その妖精ってやつさ」


「うん」


「ほんとに妖精か?」


「え?どういうことだよ」


「俺もさ、話には聞いたことあるよ、その妖精ってやつ。信じたことはなかったから、お前の話を聞いてさ、ほんとにいるかもなって思ったよ」


「なら、妖精に決まってるだろ」


「いや、もしかしてだけどさ。お前が見えてるのって、妖精じゃなくて、幽霊なんじゃねぇの?」


「は?幽霊?」


「そう、お前が話してる内容聞いてるとさ、俺の中の妖精のイメージとはあまりにもかけ離れてるって言うか……」


「な、なんだよ。怖いこと言うなよ!」


 「いや、今までの話もこっちからしたら十分怖かったよ。でもさ、今ビビってるってことはさ、お前も何か感じることがあったんじゃないの?」


「……いや〜?」


「お前嘘つくの下手だよな」


「そ、そうだよ!そうですよ!これ本当に妖精か?って思うことがありましたよ!でも、そう思いたいじゃん!幽霊って思った瞬間怖いもん!まだ妖精の方がかわいいじゃん!幽霊なんて考えたらトイレとか行けなくなるもん!じゃあいいのか?君の家行った時一緒にトイレ行ってもらうぞ?行ってくれなきゃ漏らすぞ?容赦無くその場で漏らすぞ?俺はできるぞ?できるやつだからな?覚悟しろよな!」


「あーあーあー!悪かった、悪かった!俺が悪かったよ!お前が見えているのは幽霊じゃない妖精さんだ!優しくてかわいい妖精さんだよ!」


「かわいくないよぉ!でかくてなんかきもいよぉ!」


「はーこいつめんどくせぇなぁ!お前もううちに来させないからな!漏らしてもらっちゃ困るからな!あぁ残念だよ!こんなことで親友の一人を失くすなんてな!」


「なんでそんなこと言うんだよ!さすがに酷すぎるんじゃないか!?寛容な僕でも許せないことがあるんだぞ!」


「寛容なのはこっちだろうが!じゃあなんて言えばいいんだよ!今まで我慢してきたけどなぁ、お前のそういうダルいところは治さないと──」

「あ」


「なに?」


「後ろ……君の……後ろに………いる」


「は?」


「よ、妖精!……でかい……いや、いつも見てるのよりは小さめかな……フラフラしながら、ゆっくりこっちに近づいてくる。あ、やばいかも、怖くて動けない。こっちを見てニヤニヤ笑ってる……なんで?今までこんなことなかったのに……なんで……あ、手が!捕まっちゃう!」


「はぁ!?に、逃げるぞ!」


「うおっ!手ぇ痛い……っ!」


「うるせぇ!逃げるのが優先だ!」



「はぁはぁはぁ……」


「逃げられた……のか?」


「な、なんとか」


「てか、今までこんなことあったのか?」


「いや、なかったよ。こっちからは見えてたけど、あっちから見えたり干渉されたりはなかった」


「じゃあなんだ?あいつが特別な個体だったってことか?」


「ん〜たぶん」


「俺たちのこと、捕まえようとしてたのか?」


「そうだね」


「……神隠しってあるよな」


「遊んでいる途中とかに誰にも見つからず、行方不明になるってあれのこと?」


「あぁ、あの神隠しの原因も、ああいう妖精のせいかもな」


「なるほど、そうかも。でも、助かったよ。君が速くなかったら捕まってたね」


「いや、見えてなかったら二人とも連れていかれてたさ。お互い様だな」


「ふっそうか。そうかもね」



「あいつら、やっぱ羽がないから遅いよ。足なんて使ってさ」

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