街ガラスの悪魔

ギブミーアイデンティティ

街ガラスの悪魔

 今日行くところは都心のど真ん中。ショーウィンドウやガラス張りの建物がそこかしこにある。私はそれらが大嫌いだ。

 街ガラスには悪魔が潜んでいるから。私は全力で目を閉じて、早歩きで待ち合わせの場所まで向かう。


『粧したところで、どうせ何も変わっちゃいない』

『お前の下手なメイクなんぞ、どこか既に崩れているに決まっている』

『ほら、見てみたくないのか』

悪魔が囁く。


だけど、待ち合わせ場所に着けば大丈夫。いつも私を助けてくれる、エクソシストは先に待ってくれていた。

「おまたせ! ごめん待った?」

「全然! 今きたばっか」

もう期待している自分がいる。

「あれ、いつもと髪型違うじゃん」

「うん、ちょっと変えてみた! ……どう?」


「可愛い!」


私のエクソシストは、明るい笑顔とその言葉で悪魔を祓ってくれた。

 いずれ悪魔はまた戻ってくる。けれどしばらくは、彼の言葉で、私が出せる一番綺麗な笑顔を、彼に見せられる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

街ガラスの悪魔 ギブミーアイデンティティ @give-me-identity

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ