「風で家が揺れている」 (2018年1月6日)

家の壁に、強い風が吹き付けている。私には、とても嫌な予感がしている。

私は、もしかしたら家が壊れるのではないかと思っている。(もし壊れたとすれば、笑い者だ。風が吹いたくらいで壊れる家に、愚かにも住み続けているのだから。)

階段を降りたところの廊下に私は立っている。風が吹くと、家が揺れるのを感じる。

最初は、かすかな揺れだった。注意すれば、揺れているのがわかる程度だった。

しかし、揺れは次第に大きくなり、最後には、ほとんど地震のようになった。廊下全体が前後に大きく揺れ動いており、ときおり、『バキッ』と、崩壊の音が聞こえる。瞬間的に不安を掻き立てる、とても嫌な音だった。

私は、このままではもう持たないと思った。家の外に避難することも考えたが、ためらわれた。だって、家に風が吹いているだけなのだから……。

私は、家は崩壊するかもしれないし、しないかもしれないと思っている。この家は案外、耐久力があるようだから。(もし崩壊するなら、別にそれでよいが、崩壊しないとすれば、)私は、風が止むまで家の外にずっといつづけなければならない。この寒空の中、ただ外に突っ立っていなければならない。そんなのは、いやだ。

せめて、すぐに外に飛び出せるよう、窓の近くにいたほうがいい。けど、そんなにうまく飛び出せるものだろうか? たぶん、無理だ。そのときは、助からない。家の下敷きになった場合、二階にいたほうが、助かる確率が高いだろう。

私は、二階にいることに決めた。


(分析)

現実の不安を反映した夢である。いま住んでいる家は、台風が来たり、地震があったりするたびに、壊れるのではないかと不安を感じている。


警告を与える夢だと解釈してもよい。二階にいることに決めた、私の最後の決断は、最善ではないが、現実的な判断である。自分はこれまで死にもせず生きながらえてきたし、これからもまたそうであろうという予断が今の私にもある。夢の中の私は、明らかに避難すべき状況で、避難していない。「現実」から逃避しているとも言えるし、現実へと逃避しているとも言える。現に、私はいまそうしているからである。


現実を参照することによって、夢の中の「現実」から目をそむける仕方が規定されている。おそらくは、変更する用意のない信念が基礎にあるのであって、新たな行動にでることは、あまりに消耗が大きい。二階から降りること、この家から脱出することは、外の寒さに一人で凍えることを意味している。現在の私にはそれに耐える用意がなく、他に行動の余地がなかった。この夢の結果は、現実の状況とパラレルである。


現実との関連を見失えば、夢の物語は、現実なら別の判断を下しただろうという結論に終始しがちである。合理的ではあるが、底の浅い解釈は、目の前の現実的な危機に対処しようとはしない、人間の愚かさを指し示している。

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