世界はまだ私を愛してくれているだろうか
リーシャ
第1話アズサ
世界はまだ私を受け止めてくれるだろうか。
問いかけたのは確か、物心着いたとき。
両親に愛されて居なかったいらない子供だったアズサは、ある日街を彷徨っていた。
扉から出された後、手がヒリヒリするまで叩いたのに開けてくれなかった。
お腹も空いていたし靴も履いてない。
お金も持ってないから、どれだけ歩いても、お店を見ても食べられることなど無理なわけで。
理不尽という言葉を知らなかった時、理不尽とは思わなかったけどお腹が空いたとそればかり。
近所の誰かが手を貸してくれたり、家に招いてご飯をくれたりというのは夢物語だともう少し成長した後、知った。
それに、靴下だけで歩くと目立つみたい。
それにしては誰も声をかけてくれたりもしなかったなと過去を思い出していた。
なにも言わないくせに、こちらを見ることは辞めないのだから、人というのは因果な存在。
同情するのに思うだけ。
それならされたくない。
損しているのはアズサだけ。
何か食べたい。
けれど、勝手に食べることは無理だった。
それを知られた時の恐怖を思えば、我慢した方が良かった。
意識が朦朧としても。
気絶したと知ったのは体をゆらゆらと揺さぶられて覚醒した時。
ハッとなる。
いけない、赤の他人に迷惑をかけたときもこの世で恐ろしいことが身に降りかかってしまう。
ダメダメ、立ち上がって平気ですって言わなきゃ。
名前はとか、電話番号はとか聞かれる前に立ち去らなきゃ。
慌てて走ると追ってくる足音に驚く。
も、もしかしてお巡りさんとかだったのかな。
そういう人は事情聞くまで離してくれない。
その後何が起こるのか分かっているのに、融通を利かせてくれない。
彼らが職務を達成するためだけに己という存在がどうなるのか、などということは些細な事なのだろう。
兎に角がむしゃらに走るアズサは、走りながらも足の感触に違和感を感じていく。
痛く、ない。
いつもならアスファルトがちくちくして、ごろごろして足をこれでもかと攻撃してくるのに。
ふわふわ、という感触に思わず逃げることを忘れ下を見る。
走る事と顔を下に向ける事は出来ない。
そんなことをしたらバランスを崩して転けると知っていた。
下を見て驚いた。
地面がふわふわしていた。
ふわふわしているなとは思ったが、ここはアミューズメント施設なのか。
首を傾げて難問を解こうとしたが、足音が聞こえて逃げている最中であることを今、思い出す。
逃げないと。
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