喋るハチの恩返し〜ムチッとした蜂が我が家を圧迫〜

リーシャ

第1話蜂が来た

今、大変なことが起こっている。

インターフォンが鳴ったから玄関へ行き、扉を開いた。

後から思うと何だがフォルムが人間とは違ったなとか、思う。

うん、私もうっかりが過ぎたわ。


「で、あるからに、貴方の貯蓄はいかようか」


「ハイ」


言葉なんて入ってきてない。

目の前に自分の背丈の半分もあるハチが居るんだもん。

命の危機を抱えすぎて冷や汗が出るわ出るわ。


「あの、聞いているでありますか」


「キイテマス」


「先程から微動だにされないから、なにかあったのかと思われたのであります」


「大丈夫デス」


「話を戻すと、ワガハイはダンジョンで貴方の貯蓄を増やす手伝いをしたいのであります。ですから、一緒にダンジョン登録を御願いしたいのであります」


「ダンジョン。登録」


駄目だ、さっきから単語しか聞き取れん。

それにしても語学が堪能過ぎる。


「ワガハイだけでは無理だと仲間らが言うので。となると、人間であるマイカ殿に頼もうと満場一致に」


私の意見ガン無視して満場一致ってなに??

そもそも初対面なのに色々決まってることに誰も指摘されることはないのか。


取り敢えずちょっと時間をもらえるかと伝えると、彼はむん!と勇ましく頷く。


扉を閉めようとしたらいつの間にかぬるんと入ってきて、いつの間にか、中へ入っている。


超危険なハチが家の中に入ってしまった。

ここは叫ぶべきなのかな。

いや、下手に騒いだら針でチクリされるかもしれない。

無理。


「おお、ワガハイとしたことが名をまだ名乗ってなかったであります」


「は、はあ」


「ワガハイは主に肩書で呼ばれることしかないので、名前など呼ばれないのであります」


「そ、そうですか」


「はっちゃんと呼んで欲しいであります」


「は、はっちゃん!?」


「ん?どうしたでありますか?」


「いいえ、いいえ!」


「そうでありますか?はっちゃんという名は自分で考えて、とても良い名前だと仲間たちにも好評であります」


好評なんだ……。


「ここがマイカ殿の巣なのでありますか」


「巣イコール家なんですね」


ちょっと彼に慣れてきたような、慣れてきてないような。

少なくとも今すぐ危害を加えられるというわけじゃなさそう。


「ふむふむ。やはり暮らしは良くはなさそうでありますね」


「へっ?」


いきなり来てこの言いぐさは人外っぽい。

我が家にあげてしまう迂闊さに私は負けているけど。


「あの、ところでさっきから私の貯金について色々言われてますが、何故なんですか?」


「ふむ。先程も言った通り。ワガハイ達はマイカ殿の家に巣を作ってたのであります。この家が建って直ぐ」


「この家、築20年なんですが」


蜂がそんなに長生きできるとは思えない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る