第23話
「仙太郎…」
「うん」
「……好き」
「、うん」
…何よ。
そんなふうに、柔らかく笑えるんじゃないの。
「でも、俺のほうが好き」
馬鹿ね。
私がどれだけ、貴方のことばっかり考えてると思ってるのよ。
本当は絶対に、私のほうが好きだけど。
だけど仙太郎が珍しく酷く嬉しそうだから、今日だけ言い返さないであげる。
仙太郎の頬に触れていた手を、音も無くそっと離す。
剥がれる熱が寂しいだなんて、急にこんなに欲張りになるなんてどうかしてるわね。
だけどやっぱり、触れていたいから。
「仙太郎」
「何?ヒナ」
「手を繋いで、デートがしたいわ」
いつものエスコートじゃなくて。
離れないようにと必死になるような、そんな。
「そんなことなら、いくらでも」
差し出された左手に、自身の右手をゆっくりと重ねる。
ベンチから立ち上がって並ぶように隣に立てば、他の恋人達と同じように指が密に絡まった。
「足が痛かったら、すぐ言って」
「うん。ちゃんとすぐ言うわ」
「イルカショーは見逃したけど…」
「なら、仙太郎が見たいものがいいわ。ほんとはクラゲに興味無かったでしょう」
私は綺麗で楽しかったけど、と、そう伝えれば仙太郎はゆるく口角を上げる。
「俺は『可愛い』とか、『綺麗』とか、そうやって喜ぶヒナを見るのが好きだから」
「、」
「…知らなかった?」
手を繋いで、甘い言葉を交わして、肌を染めて。
きっと今の私達は、誰の目から見ても主従には見えない。
今の私達の関係を言葉にするのなら、それは…。
ー主従恋愛【完】ー
主従恋愛 【完】 春川こばと @harukawakobato
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