第10話

キッと、挑むように仙太郎を見据える。


突然視線を鋭くした私を不思議に思ったのか、仙太郎は微かに首を傾げてみせた。


…何よ、ちょっと可愛い仕草するのやめなさいよ。


今日は私が仙太郎に落ちるんじゃなくて!


仙太郎が私に落ちるの!


そこを間違えないようにしてもらわないと困るわ…!




「ラッコはもういいわ。次の場所へ案内なさい」




少しだけ素っ気なくなってしまった私の態度に顔色を変えることもなく、仙太郎は「ではカワウソのエリアへ参りましょうか」とエスコートを再開する。


ヒールを鳴らさないように歩きながら、頭の中で作戦を練ろうと試みる。


だけど巧い策なんて、ひとつも浮かんできやしない。




「………」




そもそも、仙太郎がろくに動揺しないのが悪いわ。


私が昔から無茶振りばかり押し付けてきたせいか、表情さえあまり変わらなくなったし。


小さい頃はまだ、私の言動に振り回されている節があったのに。




「仙、」



「あ。お嬢様、カワウソですよ」



「どこ…!?」




ラッコの時と同様に、仙太郎の視線の先を追う。


けれど人だかりができているせいで、お目当のカワウソが全く見えない。

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