地雷
ESMA
立ち往生
「攻撃だ!走れ走れ走れ!!」
突然の銃撃を受け、黄土色をしたハンヴィーが、焼け付くような砂漠地帯で唸り走り出した。
「ガンナー!キャリバーを撃ち込め!」
車の天井に設けられた銃座にある、M2重機関銃の重い槓桿を2回引き、初弾を込めて斉射。
敵の改造したピックアップトラックは50口径の弾を全て貫通していく。
「一両やったが数が多い!一旦引くぞ」
ハンヴィーはその場から離れ、どんどん離れる。
「ここまでくれば大丈夫か!?」
ハンヴィーを一度停車させ、地図と方角を確認し目的の方向にルートを決める。
「ガンナー、弾はいいか?」
「全然余裕です!露天商にでも売りますかい?」
冗談を言いつつ走り出した。
「よし、出ぱ............」
突如前輪が浮いたと思ったら、ハンヴィーが後転。
ガンナーは遠心力で車外に飛ばされ、ハンヴィーはそのまま上下逆さまになって沈黙した。
「おい!大丈夫か!?」
カチッ!
「!!!!」
踏んでしまった。
「司令部に救援を.......」
胸元にあるはずの無線機を探し通話を試みる。
「こちらアルファ2、司令部応答せよ」
雑音が鳴る。
「司令部!応答せよ!」
雑音。
「クソ!」
日も暮れ始め、だんだんと辺りが暗くなってきた。
「腹減った、喉乾いた」
長期の作戦では無かったため、食糧や水もほとんど無かった。
日が完全に落ち、辺りは暗くなって何も見えなくなった。
「座りたい.........」
ずっと立っているため、足が痺れて痛くなってきた。
更に時間が経ち、時刻は19時を回る頃先ほどの戦闘での気疲れもあり、睡魔が全身を襲ってきた。
しかし、寝るとバランスを崩して即爆発。
「起きなくては」
司令部との連絡も取れず、暗い夜に1人爆弾を抱えて立っている、という感覚だけで精神がすり減っていくのがわかる。
地雷をどうにかしようにも、動かしている途中に爆発するかもしれない。
「とにかく今は寝ないようにするのに集中せねば」
なんでもいいから、気を紛らわせるため口や手を動かしたり、この先どうするか計画を立てる。
『ア.......2......アル.........おう.....よ』
突然無線機から音が発せられた。
「し、司令部!」
急いで胸元の無線機をオンにし、応答する。
「こちらアルファ2、どうぞ!」
『アルファ2、現在地を報告せよ』
今度はしっかりと聞こえた。
「任務地から南に8キロ地点だ、地雷を踏んで動けない状態だ」
『了解、すぐに救援隊を向かわせる』
これにて司令部に救援要請は伝わった。
あとは救援隊がやってくるまで待つのみ。
「やっと、やっと帰れる」
心なしか元気が戻ってきた。
更に時間が経った。
『こちら司令部、砂嵐が近づいている、どうぞ』
突然無線が鳴ったと思ったら、聞きたくない情報が流れてきた。
「嘘、うそうそうそうそ!まじかよおおお!」
風が強くなり、砂が流れ始めた。
急いで口と目を布で覆い、飛ばされないように踏ん張る。
砂嵐が大きく、近づいてくるのが分かった。
「痛てててて.......」
砂つぶが頬に当たる。
「早く、早く終わってくれ」
それからしばらく時間が経ち、だんだんと風が弱まってきたように感じた。
おそるおそる目を開けると、足元には小さな砂丘ができて、コンバットブーツの中にまで砂が入り込んでいた。
胸元の無線機の電源を入れた。
「司令部!」
電源は入らない。
「司令部!!」
一向に入らない。
「..........あああああ!!!クソ!やってられるかボケェ!!!」
無線機を投げ捨て、太ももの拳銃を引き抜き3連射。
45口径のフルメタルジャケット弾が無線機を粉々にした。
「はああああああ!!!!!」
少々後ろに見える砂嵐に向けて全弾撃ち込んだ。
更に今まで、すぐに使えるように手入れだけは欠かさなかったライフルも、30発のマガジン全てを撃ち込んだ。
「あああああああ!!!クソボケナスがよおお!クソ無線機!使えねえクソゴミ野郎がよ!」
暴言を吐いて、拳銃を投げ捨てる。
「疲れた......」
ライフルを地面に降ろし少し休む。
また少し時間が経った。
更に時間が経った。
「ヘリの音?」
安堵の表情を浮かべる。
「助かった........」
更に音が近づく。
大きな音と共に砂を撒き散らし、UH-60が空に見えた。
「大丈夫か!?」
すぐさま搭乗員が水と食料を持ってきた。
「ああ、大丈夫だ」
「すぐに地雷を解除する、動かないで待っててくれ」
地雷をゆっくりと解除していく。
「もう足をあげていいぞ」
おそるおそる足を上げると、カチッと鳴ったものの、なにも起こらなかった。
「は、はあああああ.........」
安堵したのか両足から力が抜け、座り込んだ。
両足がジンジンと痛い。
「撤収だ!」
ヘリは飛び去った。
⭐︎終わり⭐︎
あとがき
おのおのがたご機嫌いかがでござるか、ESMAでござる
こたび書おりきこの随筆、主人公がひい歩も動かなゐ物語が書きたいでござるなと思ゐ立ちしたためてみたでござる
読みてくれてありがたき幸せにござる
其れにて、いずれいずこかにて
地雷 ESMA @ESMA1456K
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