その出来事は突然だった。俺はバイトの帰り道で、今日は帰ったらどのゲームをしようかと考えていた。

　パン屋でのバイトを終え、空腹を感じていた俺は急いで家に帰ろうとしたその時、車に轢かれたらしい。轢かれる直前、一瞬、時が止まったように感じた。

　事故の直前に時間が止まったように感じるという話はよく聞いていたが、これがそうなのか。なるほど。確かに一瞬、時が止まったと思った。

　そして次に気づいた時には、俺は地面に倒れていて、血まみれになっているのが分かった。このまま死ぬのだろうか。父親、母親、妹は俺が死んだら悲しんでくれるだろうか。両親にもっと感謝の言葉を伝えておけばよかった。

　何より、外付けHDDに暗号化をかけておけばよかった。俺の趣味や嗜好が親族にバレてしまう…。

　でも、死んでしまったらそんなことも考えられなくなるだろうから、どうでもいいか…。

　色々と後悔はあるけれど、一番は親孝行できなかったことだ。異世界転生ものみたいに転生できるなら、次の人生では親孝行できるかな。いや、親孝行したいな。そんなことを思いながら目を閉じた。

　目を開けると、そこには古代中国の王族のような服装をまとった女性が立っていた。しかし、どう見ても幼い。中学生くらいにしか見えない。でも、なぜか幼いながらも色気を感じてしまった。もしかして、ロリババアなのか！？ そんなことを考えていると、彼女が口を開いた。

「私は女神じゃ。お主は死んだのじゃ。引きこもってばかりの人生だったから、もう一度人生をやり直したいと思っておるようじゃな。どうじゃ？ 私のお願いを聞いてくれるなら、今の頭脳のままで『強くてニューゲーム』をさせてやるぞ。どうだ、聞いてくれるか？」

　目の前の中学生のような子がそんなことを言っているが、にわかには信じがたい。

　でも確かに、車に轢かれて血を流して倒れたのだから、死んでいるのだろう。もしかしてまだ生きていて、これは夢なのか？ とりあえず話を聞いてみることにした。

「ここはどこですか？ なぜ、あなたは中学生ですか？」

「ここはお主らが死んだあと来る場所じゃ。女神に失礼なことを言うな！ 私は女神じゃぞ。えらいんじゃぞ！ そして、お主よりだいぶ年上じゃ！ そして、小さいながらも色気を感じるでしょ？ お主の考えてることはお見通しじゃ。」

「ばれましたか。じゃあ、色気を感じるから触らせてください！」

「ってしょうがないなぁ…ってなるわけなかろう！！ 女神の体に触れるなど100億万年早いわ！」

「100億万年って言葉を使うなんて小学生みたいですね」

「う、うるさい！ お主みたいな小坊主に小学生と言われとうないわ！ まぁ、お主が転生してイケメンだったら考えてやってもいいが」

　男も可愛い女の子が好きなように、女性もやはりイケメンが好きなのか。よし、今度こそイケメンに生まれ変わりたい。そして、ハーレムライフを送るんだ。そう考えてると、女神さまが

「あれ、なんじゃったかな。」

　と困ったように言った。

「もしかして、そろそろボケが始まってるんですか？」

「うるさい！ 何千年も生きてるとそりゃそうなるわい。」

「あ、転生の件でしたね。願いとは何でしょう？ 転生して私を抱いてほしいとかでしょうか？」

「違うわ！ お主ってやつは…。さっきも言ったじゃろ。今の頭のまま転生させてあげる代わりに、魔王を倒してほしいってわけじゃ。」

「魔王を倒してほしいってことはさっき聞いてませんが、やっぱりボケてるんですか？」

「う、うるさい！ そうじゃったな。やってくれるか？」

　最初から答えは決まっていた。前の人生は、引きこもってゲームばかりしていて、ちゃんとした人生という感じがしなかったので、もちろん転生して魔王を倒すのをめざすことにした。そして、ハーレムライフを送りたいとひそかに考えていた。

「はい！ やります！ ぜひやらせてください！ あ、誤解しないでください！ 健全な話ですよ！」

「わかっとるわ！ じゃあ、決まりじゃな。」

「どういう人物にしたいかとか希望はあるか？」

「強くてイケメンな感じにしてください。」

「そうか。ちなみに、お主の転生先は、銃と魔法のファンタジー世界じゃ。」

「じゃあ、魔法の強いイケメンにしてください！」

「なるほどな。じゃあ、楽しみにしとくといい。さあ、目を閉じて」

　すると、次の瞬間、意識がなくなるように眠くなり、眠ってしまった。

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　1話から2話の読者の減りがすごかったので、少し内容を書き替えました。2025/6/5

　1月中旬に小説書き始めたばかりなので、お手柔らかにお願いします。