Cパート

 少し経った後、倉庫の扉が開く音がした。そして誰かが入ってくる靴音も聞こえた。


(助けが来た!)


 私は物置の扉を何度も足でけり続けた。するとその音で気づいてくれたようで、物置の扉が開いた。


「日比野! 大丈夫か!」


 それは倉田班長だった。すぐに粘着テープを取ってくれた。


「日比野! その姿は?」


 やはり私のコスチューム姿に驚いている。だが今はそれを説明している場合ではない。


「班長。他の4人が奴らに連れていかれたようです。多分、船に乗せて海外に連れて行くつもりです」

「わかった。手配する。君は車で休んでいろ!」


 倉田班長は気遣ってくれたが、彼女たちのことを思うと気が気でない。


「私も探します。彼女たちのことが心配ですから」


 私も立ち上がって倉庫を出て彼女たちを探しに行った。暗い夜に海が鈍く光っている。多くの船が停泊しているため、どれかがわからない。とにかくひとつずつでも探すしかない。



 そのうちにかすかに泣き声が聞こえた。耳を澄ますとこの先だ。私は走って追いかけた。すると三上たちと連れられた彼女たちを発見した。粘着テープで口をふさがれ、両手を縛りあげられている。


「待ちなさい!」


 私は大声を上げた。三上たちは振り返って、持っていたライトを私に向けた。


「貴様!」

「もう逃げられないわ! おとなしくしなさい!」

「何を!」


 飯山が私に向かってきた。私は下から思いっきり蹴り上げてやった。するとあまりの痛みに倒れ、地面でのたうち回っている。


「この野郎!」


 今度は小川が襲い掛かってきた。私はその伸ばしてきた腕を取って投げ飛ばした。


「いてっ!」


 小川は地面に転がった。それを見て三上は慌てた。


「くそっ!」


 三上は彼女たちを放り出して逃げようとした。だがその前には班長たちが待ち構えていた。


「もう逃げられないぞ!」

「あわわわ・・・」


 三上は辺りを見渡したが、もう逃げる場所はない。観念したのか、じっと立ち尽くしている。私はゆっくり彼に近づいた。


「日比野! これを使え!」


 倉田班長が手錠を投げて渡してくれた。私を受け取り、三上の右手を強引に取った。


「誘拐の現行犯で逮捕します!」


 カチャリと手錠がはまると、三上はうつむいた。


 彼女たちは藤田刑事たちによって粘着テープを取ってもらっていた。私は彼女たちのそばに駆け寄って声をかけた。


「もう大丈夫よ!」

「ありがとう! ピクシー!」


 4人ともけがもなく無事だった。彼女たちの前を三上たちが連行されていく。それを見て恵子、いやセイレーンが提案した。


「あれをしましょうよ?」

「あれを?」


 気が付けばみんなコスチューム姿だ。悪人をやっつけた後はあれしかないが・・・私は少し恥ずかしかった。だが、


「いいわよ!」

「やろうよ!」

「OK!」


 と他のメンバーが賛成する。


「じゃあ、行くわよ! せえーの!」


 美奈、いやシャナが合図を送った。


「天に代わっておしおきよ!」


 私たち5人はポーズを決めた。それで気分がスカッとした。



 その後、三上たちを吐かせて得た情報をもとに、人身売買組織をあぶりだして壊滅させた。海外の捜査機関とも連携したから、売られていった女性ももうすぐ帰ってくるだろう。事件は解決した。


 その数か月後、私は街を歩いていた。その時、壁に張られたポスターを何気に見た。


「あっ! あのたち!」


 そのポスターには今度ステージに上がる地下アイドルグループが写っていた。


「みんなアイドルになったのね。よかった」


 とびっきりの笑顔の彼女たちはまるで妖精のように見えた。

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妖精のおしおき 広之新 @hironosin

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