真夜中SOS
相間 暖人
真夜中SOS
最近、生活習慣の変化を感じる。
仕事を止めたからだろう、一日に3回も寝るようになった俺は、1回の睡眠時間が短くなって不規則な生活を送っている。
そんな生活を続けてるのも危ないと思い、少しは運動するようにしているのだが、軽いスクワットとウォーキング程度だ。
深夜2時に目が覚める俺、昼間も寝ているせいで別に眠気を引きずる事もない。
この時間から朝食っていうのもどうかと思うが、起きたらご飯を食べるというのを日課にしているので、キッチンに向かい軽く料理をして食べる事にした。
具なしの味噌汁に白ご飯、おかずという物が冷蔵庫に入っていなかったので、めかぶと納豆に生卵をご飯にぶっかけて食べる事にする。これがまた旨い、ずるずると食べ終えてから歯磨きを済ませると朝のウォーキングに出かける準備をした。
食後直ぐに運動するようになったのは血圧の上昇を抑えようと思ったからだ。
中年になってくるとやはり怖いのは糖尿病。仕事を止めて動く頻度が少なくあった事もあり最近、お腹が出てきている。
何かの番組で食後に軽い運動をすると良いと見た俺は実戦するようにしていたのだ。
健康一番。
俺はウォーキング用の服に着替えるとイヤホンを耳に差して好きな音楽を選ぶ。
最近はまってる女性歌手の歌だ。その中でも前向きになれる曲を選んでから玄関を出た。
外はまだ暗い。当然だ、3月といっても2時45分じゃ暗いに決まってる。
少し暖かくなってきたのは救いだった。
意気揚々と歩き出す俺。いつも歩いているコースは20分くらいの道だ。
この暗い時間に歩くのがこれまた楽しかった。
静かな暗闇の中で誰とも合う事もなく好きな音楽でテンションを上げながら歩いて行く道。
この世界で自分だけが目覚めている特別な気分になれる。
8時ごろには、ネットから溢れてパンパンなゴミ捨て場も、この時間だとガリガリにダイエットしたかのように一つだけしかごみ袋がない。
いつも子供達の声が聞こえる幼稚園も静かなままだ、どこか壁に描かれてるキャラクターのイラストも寂しそうにしているように感じた。
10分ほど歩いたろうか折り返し時点だ、俺の歩いてるコースは折り返すと川沿いの道になる。
好きな歌手の曲も3曲目に差し掛かっていた。
遠い川の向こう側には時間など関係ないというようにトラックが何台も走っていた。ご苦労様ですと思いながらも優越感に浸る。
急にチカッと光るライト。人感センサーライトだ。
おっとと、少し近寄りすぎたかな。家の人が起きなきゃいいけど。と手遅れな気遣いをしながらも俺は歩みを止めない。
すると、100mくらい先だろうか、何か一定の場所でチカチカしている光が見える。
ん、あんな所に光る物なんてあったかなと思いながら歩くのを止めない。
何だろうなぁと興味が沸いてくる。
そして、残り50mくらいになると徐々に気づいた、一つのライトに見えていた物が複数ある事に。
その光は同じ物がいくつかあるのではなく、光り方もバラバラだ。
何か不良でもいるのかな?と不安になりながらも歩く。
後、30mくらいになるとやはりそこには人らしい存在がいる事に気付いた。
アップテンポな音楽にのってついここまで来てしまったが危険だ。
オカルトの類は信じていないのでこれは悪い奴らが集まって何かをしているという予測をたてる。
まずは音を確認するか?耳の中には軽快なメロディーが流れている為、状況確認ができない。
もしかしたら叫びながらの乱闘騒ぎだってありえるわけだ。
歩く歩幅を狭くしながら考える。
後25m程。
とりあえず俺は引き返す事にした。自分の勇気がわずか5m程しかないのが情けない。
何かあっては面倒だし、こんな誰もいない時間帯に助けを呼ぶ事態になったとしても直ぐに来る事は期待できないだろうと言い訳をする。
しばらく引き返すとまたチカッと人感センサーライトが光る。こんなにこのライトが鬱陶しく思える事なんて初めてだ。
俺は後ろを振り向かない、けれど後ろ3mくらいの距離だけ何か来ていないかを確認しながら歩く。
少し歩いたら右側に横道があった。
この道からならあまり遠回りせずに帰れそうだ。
その後、帰り道を変えた俺は5曲目の音量を少し大きくして帰る。
これが俺の物語。
人が傷つく世界になんて行きたくない。
目の前のSOSを訴えてる状況かもしれない所に顔を突っ込むのも臆病になる。
俺は、この平穏な世界がお似合いさ、そう自分に言い聞かせて家に帰る。
真夜中SOS 相間 暖人 @haruto19
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