04





「……撒いたか?」




振り返って後方を確認してみるが変態バカ乳の姿は何処にもない。


これは振り切ったと見ていいだろうか……。



「ふぅ……」



一息つく。肉体的な疲れは無いが精神的な疲労が半端ない。


変な世界に迷い込み、ヤバい女と出くわして追いかけっこ。ホントどうなってんだよ……と、心の中で悪態をついた。


これからどうしたもんか……。果たしてどうやったら元いた世界に戻れるのか、何の情報も得られない。


とりあえず、この場に居たらまたあの女に見つかりそうだし足を動かそう。



歩きだそう振り返る。




むにゃりっ。




「あんっ♡」




顔面を包み込む何やらいい匂いのする柔らかな感触。どうやら顔面に何かに突っ込んだようだ。



「捕まえましたぁ♡」



ガシッと何者かに抱き締められる。



「もう逃がしませんよ!おち〇ちんさんっ!」


「おいおいおい。なんでオマエがッ……」



柔らかい物体から顔を上げると、そこには赤らんだ顔でハァハァと鼻息の荒い先程まで追いかけっこをしていた変態バカ乳女が居た。



「どっから湧いて出やがったテメェ」


「さぁ……何処からでしょう?」


「くっ……このッ!……離せ!」


「きゃっ」



力任せにバカ乳女を振り払うとあっさり簡単に振り解けた。あんまり力は無いのね、この女。


勢い余って女はドサッとその場に尻餅を着いてしまった。



「もう女性をこんな乱暴に扱うなんて……」


「あっ、いや。これは……なんか、すまん……」



流石にやっぱりどんな変態でも女性は女性。乱暴に扱うのはどうかと思う。反射的に謝るのだが……。



「んっー!とても良いですよっ!もっと乱暴にしてくださいッ!もっともっともっと!物を扱うように乱暴してくださぃいッ!」


「ドMかよ……(ドン引き)」



よし。逃げるぞー。


俺は脱兎のごとく駆け出した。




…………。



…………。



…………。




「オマエさぁ……ホントどっから湧いて出てくるわけ?」


「だから私からは逃げられませんよ」



逃げても、逃げても、逃げても。


女は振り返るとそこに居た。


走って、逃げて、振り切って、撒いたと思って、振り返って、姿が見えないのを確認してから再び振り返るとあら不思議……女は必ず俺の背後に居た。


もう完全にホラーなんだよなぁ。


流石にこう何度も繰り返したら馬鹿でも理解出来る。理解出来てしまう。


俺はおそらくこの女から逃れられない。



「そろそろ逃げるのもお疲れになったではないですか?」


「いや疲れては無いけど」


「私がたっぷりおち〇ちんさんの疲れを卑してさしあげますよ」


「いい加減その呼び方やめない?」


「お名前を教えて頂けてないので」


「神崎です」


「下のお名前はなんでしょうか?」


「教えません」


「それではこれから旦那様と呼ばせて頂きますね!」


「どうしてそうなった……」


「この世界には旦那様と私の2人きり……となれば2人が結ばれるのは当然のことでしょう?さあ!旦那様!私と本気の子作り(ピー)で子孫繁栄と参りましょう!」


「参りません」



やっぱりイカレてんなぁ、この女。



「それでは私は先程の社にて子作りの準備をして、お待ちしておりますので、是非お越しくださいね」


「会話にならねー」


「残念ながら旦那様はもう私から逃れらなくなりました。安心して下さい。私、これでも待つことは得意ですので、いつまでも旦那様のお帰りをお待ちしておりますよ」


「行くわけねぇだろボケ」


「ではでは」



瞬きをしたその一瞬で女は消えた。まるで元からそこに存在していなかったかのように、姿が消えた。



ホントにマジでなんだったんだアイツ……。



散々、追いかけてきたかと思えば、なんかあっさり手を引いてどっかに行ったな……本当に意味が分からん。


まあ、いいや。どっかに行ってくれたなら、それでよし。


とはいえ、それで状況が好転した訳でも無く現状は依然として意味不明。どうやったら元の世界に帰れるかも分からない。


とりあえず、あの女が気が変わって戻ってこないウチに移動しよう。




…………。



…………。



…………。




気がつくと俺はバカ乳女と最初に出会った神社に居た。


社を見ると戸が空いており、その奥にはバカ乳女が座っていてニコニコ笑いながらコチラに手を振っている。うわぁ。腹立つなぁ。張り倒してぇ。



不思議だなぁ……。



これでもう何回目になるのか。何処をどう歩いても……何故か、この場所に辿り着いた。何度も、何度も。必ずこの場所に辿り着く。


空間が歪んでるとか?そんな感じ?無限ループする廊下とか階段とか……そんな感じ?


疲れは無いとはいえ、こうして何度も同じ所をぐるぐる、ぐるぐるしてるのは流石に面倒になってきた。


俺は諦めてバカ乳女の元に歩いていく。



「お帰りなさいませ旦那様」


「これどうなってんの?」


「さぁあ?私にも分かりません。記憶喪失ですので」



都合よく記憶喪失持ち出しやがってからに。



「それでは、旦那様……まぐわりましょうか」


「嫌です」


「とはいえ……他にすることも無いのでは無いでしょうか?」


「まあ……それはそうだけど」


「あまり難しくお考えにならず、ただ本能の赴くままに……」



女に手を引かれて誘われる。


ゴロリと布団の上に転がる女の上に俺は覆い被さる体制になってしまった。



あー……。


もー……。



なるようにしかならんか……。





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