転生監督のサッカーチーム作り

むずむず

プロローグ

プロローグ

「さあ、ラスト1本!声出していけ!」

 創部して5年とまだまだ若いチームだが、今年は地区予選突破も目指せるような仕上がりを感じる。


 中学のサッカー部の顧問になったからにはちゃんとした結果を出したいもの、創部5年と若くともそれは変わらない。特に俺自身がそれこそ心血注いで来た、この部活動ではよりその思いは強い。


 部員たちを見ながらそんな事を考えてると、部活動の終了の時間になっていた。

「....よし、今日はここまでにしよう。今週末の土日に地区予選が行われるから、今週はスタメンを中心に戦術の確認をしていく、気を引き締めていこう!」

そう言って今日の部活動は終了した。


 もちろん、あくまでも教員である俺にはまだまだ仕事は残っているが。

 都市部の方では段々と中学高校での部活動がなくなり、地域のクラブチームでの活動に移行しているようだが、あいにく俺が教員をしている地域ではまだまだ時間がかかりそうだ。


「ふぅ〜 後は週明けの授業の準備だけか〜」

生徒たちは週末の地区予選を終えた後は、学校で通常通り授業を受けるわけだから、俺の方も当たり前のように授業をしなければならない。


部活動の顧問はブラックだと言うが、特にサッカー部なんて酷い物だろう。最初こそ、若いチームだからとなんやかんやと任せられたが、気づいたら週末は練習試合や合宿などで、まともな休みなんてのは正月だけ。夏休みなんて、教員からしたら過酷な修行の1つに過ぎない。


ただ、そんなことを考えていてもなんだかんだサッカーというものが好きで、人にものを教えることも好きなだけあって、続ける事ができてるぶんましである。


「先生、今週末のサッカー部の地区予選楽しみにしてますよ!例年に比べて今年は地区予選突破が狙えそうらしいからね!」

 

そう言ってきたのは、俺がここの教員になる前に創部1年目を担当していた、教員の方だ。

どうやら親族にプロのサッカーチームを経営している人がいるらしく、その流れでやってみたようだが、プロと中学生の部活では全く話が違ったらしく、俺がここに赴任してきた瞬間に顧問から降りたようだ。


「ええ、今年こそはと生徒たちも気合いが入ってますよ。是非応援に来ていただきたいです!」

どうせ来ないだろうが、いわゆる社会人トークというやつだ。


「生徒たちの気合いは十分とよかったです!また、週明けに良い結果が聞けるのを楽しみしてますよ!」

 そう言ってスタスタ帰って行った。




―――――――――――――――

週末の地区予選会場


「よし、アップはそこまで!全員集合!」

 地区予選1日目の試合直前。アップが終了し試合前最後のミーティングである。

 3年生にとっては最後の大きな公式戦のため、悔いの残らないように全力でプレーしてもらわなければならない。


「3年生にとっては今大会が最後の公式戦になる。毎年、今年こそはと意気込んで望んではいるが、今年は今までにないぐらいみんなのレベルは高い。」

 

こういった時はどんなことを言っても、毎年同じことを言ってるように思われるかもしれないが、事実今年のチームの出来は申し分ない。


「いつも言ってるが、俺は試合中ベンチから声を出して見守る事しかできない。だから、今までの練習を思い出して、全力で悔いのないように走り切ってきて欲しい!」


これは毎年言っている。

ただそれでも、本気で練習してきた部員たちだからこそ、毎年言ってる事でもありきたりな事でも、試合中の心の支えにして欲しいと思ってる。


―――――――――――――――


「ピーッピーッピー」

 試合終了のホイッスルがなった。

フィールドにいる部員たちの顔を見れば、皆やり切った顔で、中には全力を出し切り座り込んでいるものもいる。


「1-0」

なんとか辛勝である。勝ちはしたものの、余裕はなく明日の地区予選突破がかかってる試合までに疲れを取れるかがカギになってくる。


「みんな、よくやった!全力を出し切った良い試合だった。明日はいよいよ地区予選突破がかかった大事な試合だ、この後はしっかり休息をとって明日に疲れを引きづらないようにしておくように!」


明日は部員たちにとっての本当の大一番、ここで勝てば創部5年と若いチームだが、地区予選突破となる。

俺も明日に備えたしっかり休まねばならない、最近は地区予選のための練習と教員としての仕事で板挟みにあい、全く休めていない。

地区予選が終わった後は1日練習が休みになるから、その日は俺も全力で休むことにしよう。


そんな事を考えながら、シャワーを浴びベットに入った私は、深い眠りにつくのであった。

それはとても深く、彼が目覚めることのない眠りだった。


―――――――――――――――


「ハッ!!やばい!寝過ごした!!」

目が覚めた瞬間感じた、寝過ごしたあの感覚で大事な試合当日に何やってんだと思ったものの、目覚めて視界に入ってきた風景に違和感を覚える。


「あれ?ここは…私の部屋じゃない??」

 そう目が覚めた部屋は私の部屋ではなく、真っ白なただただ何もない空間だった。目の前に何かいるようないなような、そんな不思議な感覚だけはあった。


「うむ、目が覚めたようだな。」


 なんだ!何かいる!目には見えないが、確実に声が聞こえた!


「ああ、そんなに驚くでない。我は君たちの言う所神である。そして、ここは死んだ魂達の向かう先を決める場所である。」


 神だと……?目には見えないナニカが声だけでそんな事を言ってくる。

 いやまて!!

 死んだ魂達だと!!??私は死んだのか??


「そうだ、君は死んだ。いわゆる過労死というやつだろう、肉体はとことん消耗していたが、魂だけでなんとかここまで繋いでいたのであろう。それもここまでであったようだが。」


 なんと……

 私は死んでしまったらしい。もう部員たちの行く末を見守ることもできないのだろうか。悔しい気持ちと少しだけ解放されたようなそんな複雑な気持ちだ。


「ただ、そんな君の魂は近年稀に見るほどの強度と器を持っておる。それこそ、神の観測対象として申し分ない程度に。どうだ、我々神の観測対象としてもう一度、生を謳歌してみんか?」


…………なかなかに不安になるようなこと言う神だ。考えても見れば、神と名乗る超常の存在から観測対象などと言われて何も思わないわけがない。それにこれは異世界転生ってやつだろう。そしてチートをもらって俺ツエエエをする流れだ、こう見えても私は生前?そう言った漫画やアニメは見ていた方だ。


「いやいや、異世界転生をしてチートで俺ツエエエなどはできんよ。そんな事してしまえば、また一つ世界が崩壊してしまう。」


 うん。どうやら私の勘違いだったようだ。そして世界は私の知らないところで一つ崩壊してたらしい。


「君にはもう一度、地球の日本に生まれて好きなように生きてほしい。ただ、それだけだと楽しく無いだろう、チートとまではいかんが、少しだけ才能を授けよう。何か欲しいものはあるか??」


 なに!才能が貰えるだと!チートでは無いとは言うがなんだかんだ使い方でチートになる流れだろう!

よし!ここは、まずは定番の鑑定とかだろう、現代日本でもそう言った能力があれば、問題なく才能を発揮していけるはずだ!


「うむ、鑑定か。」


 ん?反応が悪いな、もしかして何かしらの法則に触れて使えないだとか、使ったら寿命が縮むとかいうデメリットがあるのだろうか?


「いや寿命が縮むわけでは無いのだが、鑑定を使うとその瞬間に世界に存在する万物の情報が、脳に直接送られるからのお。人間の脳だと処理しきれずに、死んでしまうだろうからな。」


ふ、ふぅ〜あぶねえ。何も聞かずにもらってたら、危うく転生した瞬間鑑定使って、脳死だったりになってたかもしれねえ。

そ、それじゃあ鑑定じゃなくて。もっと限定的にした人の鑑定とかはできないだろうか?


「まあ『人物鑑定』であれば問題ないであろう。ただ君の器にはまだ才能が入りそうだからな、多少生きやすいように他の才能もつけておこう。」


おお!それは嬉しい。人物鑑定だけでも現代日本では十分なのに他にもくれるのか。


「そうだな、我々としては観測対象にはできるだけ長く生きて、楽しませてほしいからな。身体を普通の人間よりは丈夫になる『身体強化』と、より面白い様に直感が鋭くなる『超直感』もつけておこう。」


なんと!人物鑑定だけでなく、身体を丈夫にしてくれた上に、直感が鋭くなる才能もつけてくれたのか!

ここまでもらうと、現代日本では派手ではないが悠々自適に生きれるんじゃないだろうか!


「それではこれより、転生してもらおう。転生すると言っても、また赤子からやり直すのは大変だろう、ある程度成人になった状態から身体を作ってそこに魂を入れてやろう。なに、それまでの記録などは作っておいてやろう。」


 至れり尽くせりじゃないか!なんだかんだ言って漫画とかで赤ちゃんからやり直すって地獄だろうなとは思ってたから、よかった。


「よし、準備も整った事だし、転生の時間だ。ああ、そうそだ忘れていたが、生前の事は他の人間には言ってはならぬ、言ってしまっては神の存在や世界の辻褄が合わなくなるからな。まあ、知られてしまってもその存在自体消す事は簡単だがな。」


 …………なんか不安になる事言ってなかったか?


「それではせいぜい楽しませてくれよ」


 そうして、また私は深い眠りについたのであった。次に目覚める先はどんな所なのかと、不安と期待の混ぜ合わさった気持ちのまま。


「ふう、転生させるのも楽ではないのぉ。まあこれでまた少しは楽しめるだろう。さて、また100年後に見にくるとして、他の世界でも見に行くとするかの」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る