さようなら、私の妖精

Yoshi

第1話

 私の隣には、生まれた時から妖精がいた。


 何か困ったことがあった時は、いつも妖精に相談した。


 友達のこと。勉強のこと。親のこと。何でも相談した。


 妖精は、いつでも教えてくれた。


 妖精は、いつでも味方でいてくれた。


 だから私も、いつも妖精の言うことを信じてた。


 悩みも、生活も、成績も。何でも妖精の言う通りにした。


 そして、恋愛も。


「お前さ……、その、言葉を選ばずに言っていいか?」

「ん?いいよ?」

「何つぅかな。変、だよ」


 変?私が?そんなわけない。だって私は妖精を信じて……


「それだよ、今の顔。なんか、見えないもの見えてます風のそれ。正直言って、キモい」

「……もしかして、妖精のこと?ハルト君にも自分の妖精、いるの?」

「何の話してるんだよ……。キモいって。とにかく、お前とは付き合えない。わかってくれるな?」


 彼が何を言ってるのか理解できなかった。


 私は妖精に従っただけだった。


 ハルト君に恋をしたのだ。


 妖精に、結ばれる方法を聞いた。


 そのままの私だったら大丈夫だって、妖精は言った。


 それに従っただけだった。


 なのに、だめだった。


 キモいって言われた。


 なんで?


 ちょっと、考えた。


 妖精のせい、なんじゃないか。


 妖精、どう思う?


――気にしないでいい。君の魅力に気づいてないだけだ。


 でも、キモいって言われた。


 妖精のせいなの?あなたのせいなの?


――そんなわけないじゃないか。


 本当に?


――信じてよ。今まで、君の役に立ってきただろ?


 でも、最近は成績も落ちてきたよ?


 友達も少なくなってきた気がする。


 お母さんとお父さん、仲悪いよ?


 それにさっき、キモいって……。


 考えてみたら、妖精。あなた、最近役に立ってなくない?


――難しいこと考えない方がいいよ。もうすぐ授業始まっちゃうよ?


 え、本当に?


 本当だ。あと10分だ……。


 戻らないと。


 教室に帰ると、一斉にみんなが私の方をみた。


 何でだろう。面白いことでもあったのかな。


 クスクス笑ってる。


 そのまま授業を受けたけど、どこか落ち着かなかった。


 授業が終わった。そろそろ帰ろう。いつも通り、妖精と一緒に。


「あの……西本さん」


 私の名前が後ろから呼ばれた?


「なぁに?」

「えっと、噂になってたよ」


 何がだろう。


「ハルトに振られたこと」

「それはびっくり」


 妖精、何で教えてくれないの?もしかして……


「に、西本さん!」

「な、なぁに?」

「その、それ、やめた方がいいと思うな。クラスでも、ずっと馬鹿にされてるし……」

「え」

 

 私、馬鹿にされてたの?


 妖精。話が違うじゃないか。


――イヤイヤ、たまたまだよ。


「もっと、現実を生きなよ」


――こんな奴に耳を貸す必要はない。君は、僕の言うことを聞いていればいい


「無理しなくていいんだ!!」


 私は考えた。


 私は考えた。


 私は考えた。


 机に妄想女って書かれてたのを思い出した。


「妖精、もういいよ」

 


 

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さようなら、私の妖精 Yoshi @superYOSHIman

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