一人飲みを終えて大衆酒場の縄のれんをくぐった先、小糠雨の路地裏で主人公が遭遇したのは、社内で噂になっている「新卒社員と既婚の主任」の密会現場でした。
本作は、派遣社員である主人公の視点から、職場の人間関係の生々しい一端を切り取ったショートストーリーです。
最大の魅力は、わずか数百文字という短さの中に凝縮された、圧倒的な「哀愁とリアルな空気感」です!
不倫現場を目撃してしまった気まずさだけでなく、新卒の正社員から「派遣さん」と見下される冷ややかな視線や、自身の立場が会社からは「物件費扱い」であるという乾いた自己認識が、雨の夜の情景と相まって読み手の胸に深く刺さります。
劇的な修羅場が起きるわけでもなく、「まあ、どうってことないよね」と感情を波立たせることなく静かに日常へと戻っていく主人公の諦観に、リアルな大人のほろ苦さを感じずにはいられません。
せんべろの帰り道にふと味わう、冷たくも余韻の残る人間模様をサクッと読みたい方に、ぜひおすすめしたい作品です。