誰もが知ってるあれ

　子供の頃一度は買い与えられたものだ。それは説明書通り組み立てて、飾り付けて、後は置いておけばいい。

　いや、もう少し詳しくあるにはあったが。まあ、わかりやすく言うならそうだ。知育向けとして大抵、親は子供に買い与える。特別高いという程でもないからな。

　学校や幼稚園だとかが配ることもあるぐらいだ。だからあなたが知らないというのは、全く理解できない。

　今時珍しい、知らずに育ったなんてのは中々ユニークな冗談だ。

　どんなそれが来て欲しいか、それによって組み立てる手順とか後の工程が違ったりはするけど。９割近い奴はみんな経験はあるものだ。

　専用のキットを買えばいいのさ。後は難しいことなんて無いさ。試しに帰りにでも買えばどうかな？

　経験が無いなんて人生損してるぜ？

　学校じゃ自由研究の発表でどんなのにしたかって定番過ぎる話題だ。むしろ、知らずに生きるなんて難しいだろ？

　だから、妖精キットだって！

　ほんとに知らねぇのか？　冗談キツイって。

　最近じゃ専科のある大学もあるし、研究もあるんだ。昔は遊びって感じだったのにな。時代って凄えのなんのって。

　たまに親に内緒でやっててさ、どっから拾ってきたんだ！　って怒られたりもしたよなぁ。悪い悪い知ら無いんだっけ？　なあ今日エイプリルフール？

　だあ！　マジでレアな奴だなお前。そういう設定とか？　だとしたら思んねぇからやめとけ。マジなら病院行けよ。

　作ったろ。ドールハウスみたいな奴だったりすることもあるし。そういうので代用する奴もいるけどな。

　そうそう思い出したんだけど。同級生で話題になってたから。失敗した奴がいてさ。一時販売中止になったんだ、んで。かったりぃなってみんな怒ってたっけ。

　知らない？

　近所だけだったんかあ。あの事件。

　妖精キットってさ。どんな奴が住み着くかとか性格だとかほんと、まばらなんだよな。

　で、そいつ。なんであんなことしたのかわかんないんだけどね。

　餌にさ、親の指を夜中就寝してるタイミングを見計らって切って落としたんだと。それをさ妖精に食わせたって。そこまでならまぁ良かったんだけどなぁ。

　反抗期とか思春期だったのかな。親を結局丸ごとちょとずつ毎日刻んだものを餌に与えてたらしい。

　それじゃあ飽きたらずに家庭訪問に来た教師まで。もう騒ぎどころじゃなくって。

　結局なぁ。あいつ自分まで餌にしたっぽい、警察来たときには骨ひとつ残ってなくて。乾いた血液がそこらじゅうって、酷い有り様だったらしい。

　例の妖精キットは丸ごと回収されて、その会社の妖精キットしばらく販売中止になってて。リコール対象にもなってたはず。

　あの時はぎょっとしたよな。

　ああ、知らないんだっけ？

　ともかくさ、そんくらい身近なんだよな。でもひとつ大事なルールがあって妖精キットで住み着いてえっと、なんだったかな。ともかく一定期間したら、販売会社に送り返さなきゃなんないんだわ。

　都市伝説レベルで色んな噂があったかな。例えば回収されてきた妖精がその会社で働いてるとか。その妖精を精肉にして売りさばいてるとか。あー、あと。検査に引っかかった妖精の持ち主はなんか連れてかれんだっけか？

　どれも信憑性乏しいしなぁ。噂は噂に過ぎないだろ。

　ともかく妖精キット帰りにでも買えば？

　レシピの組み合わせで無限大なんだって。大人でも未だにさ、はまってて買う奴とか趣味にしてる奴いるぐらいだ。

　気をつけろよ妖精の中でもなレアな奴があってさ。

　ニンゲンって言ってなんかヤバいらしい。

　あれ出たら絶対直ぐ販売元に返した方がいい。さっきいってた事件の奴が住み着いた妖精も、ニンゲンって聞いた。

　珍しいというか都市伝説レベルのレアだから、まあ、無いと思うけど。

　もしもの時の呪文みたいなの有った気がするんだけど覚えてないわ。調べりゃ出てくるよ一発でな。まあ。ほんと出ないって。

　それと聞いた話なんだけど、妖精の肉。旨いらしい。知らないけど。大学で研究してる奴が言ってた。冗談だと思うけどな。

　ん。どした。顔青いぜ？