第8話 神さま、敗北する
ムラのみんなが歓喜に沸いていた頃、
サクヤは一人神社にこもり、必死にお祈りを続けていました。
白木の祭壇を立て、最上部に白々と周囲の明かりを
反射する丸い手のひらサイズの鏡。
現代のガラス製鏡と違い青銅製の本体に
薄く
放っておくと錆びるので、毎日磨き上げる必要がありました。
その手前にはくびれた胴が付いた丸い
これは食事台ですね。私たちも同じもので食事してます!
そして私たちの食事と同じ料理を
神職のお勤めとして毎日の
このときのお祈りは日々のそれとは違いました。
(みこ神さまに会いたい! みこ神さまに会いたい!)
私はその思いの一心で、またしても2000年の時を超えて
みこ神さまと繋がる、世紀の大秘跡を成し遂げてしまうのでした。
『おっけい、これでいきましょい!』
見えた、みこ神さまが見えた!
二人の神さまがこれから
お相手は白いお耳が特徴の
こっちも可愛い!
神さまたちは縦横2尺ほどの大きな木の板に
白黒の小石を載せ、うんうんと考えていました。
こ、これが天界の遊戯!
私は天地の真理を垣間見てしまったように興奮してしまいました。
勝負で使われている格子状に黒線が引かれた大きな木の
丸い大木から、どうやってこのように粗一つなく
平面を切り出し、直方体に整形できてしまうのでしょうか。
どうやって縦横に黒い直線を正確に引くことができるのかしら。
私の見知った技術ではありえない高度な仕上がりなのです。
なるほど、これは神の遊戯に違いありません!
『自分の色の石を、
縦横ナナメに5つ並べたら勝ちなんだよ』
狐神さまが手際よく説明してくださいます。
みこ神さまと違ってソツがない感じです。
『ふ~ん、そっか…』
みこ神さま、すぐに理解されたようです。頑張って!
みこ神さまが黒、白狐さまが白を持ちました。
『最初、どこでもいいから置くんだよ』
『うん、置いた』
『じゃ、お隣に~』
『あたしも、お隣に』
『上に伸ばしちゃおうかな』
『みこも上に』
互いにそのまま伸ばしていった結果。
『あ、勝ちです』
『うわわっ!?』
みこ神さま、あっさり負けてしまいました。
でも、次はきっと勝てます。私たちの神さまなのですから!
次も。
『うっ』
次も。
『ううっ』
次も…。
絶句する神さま。
『ええ~ん、もう嫌だあ…』
(えぇ…)
負け続けたみこ神さまは、子どものように泣きじゃくります。
全力応援中のサクヤも涙を禁じえません。
ああ、目の前が暗くなってきました。
サクヤ、もうダメみたいです。
神さま、次こそ勝ってください…
バタッ
サクヤは力尽きてその場に倒れ込んだ。
どこから見てもただの限界オタクだった。
※碁盤(木の盤):
現代工芸の技術水準からすればなんてこともない物かもしれないが、
弥生時代にノコギリは存在せず、
(10cm程度の小型のノコギリが出現するのが4世紀古墳時代)
木を平滑に仕上げる台カンナに至っては平安時代まで登場しない。
それまでの日本には槍カンナしか存在しない。
法隆寺の創建当時から残る柱材には槍ガンナ特有の仕上げ跡が今も残る。
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