第27話
✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱
美虹は焔を連れて草月村にある八月一日家を訪れていた。
外観は他の民家より大きい洋風で家族にガーデニングが趣味の人もいるのだろうか、チラッとみえる敷地に色々な花が咲いている。
獅子のドアノッカーをコンコンと叩くと、すぐに女性がやってきた。
「はい、どちら様で〜あら美虹様と朱雀様…!」「突然の訪問で申し訳ございません。涼花ちゃんと鈴花ちゃんはいますか?」
すぐに中へ通してくれる。外観もだが中も洋風のものが多い。
(この家で占い館をしているんだっけ、どこでやってるのかな?)
思わずキョロキョロしてしまう。
遠された部屋で紅茶を飲みながら待っていると、ドタバタと慌てるような足音。バンッと扉が開く。
涼花と鈴花が満面の笑みで現れた。
「待っておりましたわ!私たちの占いでは今日、焔様がお迎えに来てくださるとでましたの!」
「わ〜…焔様…嬉しい…」
焔に駆け寄り、隣に座っていた美虹を勢いよく突き飛ばす。
『美虹、大丈夫か?』
「うん平気だよ」
今どきの小学生パワーは侮れないなと関心するほどには余裕がある。
「どうしてあなたがいるんですか!当主のご令嬢とはいえ、私たちの邪魔は許しませんわよ!」
「占いには…焔様だけって…」
ゆっくり喋る鈴花はわかりにくいが涼花は敵視している。あいかわらず言いたいことだけ言ってこちらが口を挟む隙がない。
焔を連れて来たのは失敗だったかと想っていると双子の後からやってきた男性が静かに怒った。
双子は黙り、座った。
「申し訳ない。私はこの八月一日家の主人で涼花と鈴花の父です」
双子父は長身でダンディーな髭の素敵オジサマ系である。
「私も同席してもよろしいでしょうか」
「はい、よろしければ」
むしろ双子を止めてほしいので居てほしい。
「今日は双子にお話ししにきました。二人は神通力があるから焔の神子だの番になりたいと言ってまして…最近絡まれてて…」
双子の父親の前なので歯切れが悪い。
「焔…呼び捨てに…するのやだ…」
「私たちの方が相応しいのですわ。当主の娘だからと本当におこがましい!」
また興奮気味の双子を双子父が止めてくれる。
「神通力は100年に1人みたいで不思議なんですよね。2人はどうやって気がついたの?」
「これ〜…」
鈴花は「おまじないBOOK」という児童向けの本をだした。所々汚れていたり髪が黄ばんでいる。年数が経っているようだ。
「これはお母様からいただいたものです。このおまじないを使うと効果があり、他のおまじない本を物資で手に入れ、試したところわずかながら効果がありました。偶然だと思えずおまじないから占いに変えました」
「タロット占いから始めたの〜…」
「で、当たったと?」
双子父はまぐれだと思ったが間違いないと確信したようで神通力は特別な力だとか朱雀様の神子になれると話したようだ。
神通力を知っているのは大昔に神子を排出し記録が残っていたと。
(お父さんが双子を調子に乗らせたのね…)
「もう少し早く産まれていれば私たちを神子や番にしてくださったのですか!」
『俺は美虹以外は今後、番にも神子にもしない。俺は美虹がいいんだ。産まれが早い遅いは関係ないんだ』
「…………」
唇を噛み、悔しいそうな双子。
双子となんとか変われないと思ったのだが焔がなかなか靡かない。双子よ、もっと頑張ってほしい。
『もし俺がお前たちを神子にするとしてもどちらか一方だけだ』
これには双子もショックを受けたように動揺する。同じクラスの晴陽によると常に何をするのも一緒で二人が離れることはないそうだ。
『で、どっちが神子に相応しいんだ?』
ニヤッと意地悪そうに笑う焔。
双子たちはお互いに手を握ったまま黙っている。
『父上はどちらが相応しいと思う?』
「…どちらも選ばれないのでしょう?」
『例えばだ。もしかしたら気が変わるかもしれんぞ。神は気まぐれだからな。番になれば天界に行って二度と帰れないが構わないか?』
焔の意地悪は続く。
「…やだぁ……涼花…合えない…ずっと一緒…アヤカシの番…いやああっ〜…」
鈴花が泣き出すと涼花も泣き出した。
「私も鈴花とずっと一緒です。だからアヤカシの打診だって断ってるんですわ」
どうやら諦めてくれそうだ……あれ?これは私が困るやつじゃ…と平然を装いながらも頭の中では絶叫していた。
「鈴花と離れるくらいなら神子なんて価値ありませんわ。焔様に美虹様、困らせてしまい申し訳ございませんわ」
「……ごめん…なさい…」
双子は丁寧に頭を下げた。
今は二人一緒でもいつかは離れる日がくるのではないか?と余計な心配をする美虹だった。
「神子の件は潔く諦めますが、私たちは美虹様を焔様の神子としても番としても認めておりませんわ!」
「……うん。」
双子は悪い顔をしている。
「私たちの占いによると近いうちに街に行かれるようですわね?私たちも連れて行ってください。美虹様の行動を監視し相応しい女性か見定めましてよ?」
「…うんうん」
双子の占い侮れぬ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます