現代パチンコ奇譚 パチ屋の謎は、ニートの俺と異世界の魔女が解き明かす

ムタムッタ

欲望と混沌渦巻く魔力の地、パーラー「らすべがす」

Round1 追放された魔女は現代転移してパチンコを打つ


 パチンコとは、戦いである。


「きたっ、きたっ! 金色! 熱い、これは熱いよ享楽きょうらく!」

「はいはい、ヨカッタネ」


 パチンコで『金色』とは、天国と地獄。一見勝利の女神にも見えなくないが、しっかりと悪魔の側面もある。一体今まで何度地獄を味わわされてきたことか。どんなに良い色を1度見せても、その後に何もなければ何もない。何もないったらないのである。


「え、なんで⁉︎ なんでなんにも熱い演出来ないの⁉︎」


 信じられない光景を目の当たりにすると、人間パチンコ台のボタンを連打したくなるもんだ。たまに殴るやつもいる。黒いとんがり帽子にこれまた黒いローブを着た少女は、台下のレバーを両手で掴んで離さない。


「頼むよぉー、もう2万円も入ってんだよぉ!」


 ……俺の金なんだけどな。

 椅子を前後に揺らしながら、隣の魔女はお祈りポーズ。異世界で超優秀な魔法使いだそうだが、どう見てもただのパチンカスだ。


「あ゛ぁ゛ーッ何も来ないッ、死んだッ、終わりッ!」


 とか言いつつ期待しながら、そっとデカいボタンを押すと、虹色の光と一緒にパチンコ台の液晶画面には333と数字が並んだ。


「んっほぉっっっっーッ!」

「さっきからうるせぇぞ」

「2万投資から奇跡の逆転劇の始まり……さぁ享楽君、今日の晩御飯は何がいい⁉︎」


 初当たり取っただけで勝った気でいるんだから羨ましいもんだ。本当の地獄はここからだというのに。

 

「じゃ焼肉」

「よぉーし、目指せ打ち止め9万発! 100年に1人の魔女の実力、見せてやろうじゃないのぉ〜!」


 人間、目標は高いと良いと言ったり言われなかったり。高すぎる目標は達成できないからね。俺みたいに当たれば良いなと思わなきゃ(現在3万円目)。


「いひひ〜楽しみにしとけよぉ」

「お前……目的忘れてないか?」

「わ、忘れてないよぉ! 今日もお店に散らばる謎を解くんでしょ⁉ この当たりが終わったらね!」


 俺たちはパチンコ屋の謎を解明するためここにいるはず……


 隣の女は異世界からやってきた魔女、ルミナス。フルネームはルミナス・アークライト。なんかしらんが異世界から追放されてやってきた魔法使い(笑)である。


 ちなみに俺の家の居候だ。

 

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