バーチャルでエンディング妖精は撮影できますか?
刻露清秀
🧚
「エンディング妖精って撮れねぇかな」
Vtuberオーディション番組、『ミラステ!〜Vtuberスター発掘オーディションGirl's Edition vol.1〜』通称ミラステ、クライマックスとなる最終候補者のパフォーマンス演出において、総合プロデューサーがそう発言した。
配信上のモーションキャプチャーなど3D配信の演出チーフは、その単語を知らなかったため、検索をかけた。
「……あ〜。要は曲の最後に、特定のメンバーにクローズアップしてカメラ目線ってことですか? 難しいっすね」
エンディング妖精とは2016年に韓国で放送されたオーディション番組の際、この演出があり、クローズアップされたメンバーの美しさに、このあだ名がついたことに由来する。以降韓国の音楽番組では定番演出となっている。
「何が難しいの?」
総合プロデューサーは、歴の長いVtuberであり、自身もアクターとして3D配信に参加したことがある。だが技術面ではほぼ素人である。
「まず、モーションキャプチャー用のセンサーとかカメラと、メインの放送カメラの位置・角度が一致しないんすよ。わかると思いますけど、実際の演者の表情とアバターの表情ってズレることあるじゃないすか」
「気合いでなんとかなんない?」
「ならないっすよ」
演出チーフはため息を吐いた。
「こればっかりはこっちの技術の問題だけじゃないんで。今回撮るのってモーキャプやフェイストラッキングに不慣れな演者しかいないでしょ? 慣れてないやつがいきなりできることじゃないし、配信するプラットフォームの状況にもよるし」
反論しかけたプロデューサーに向けて、チーフは指を左右に振った。
「あと演出的に面白くないっすよ。この番組で使ってるアバターの表情ってそんなに種類ないし、顔文字みたいな顔アップにされてもな〜って感じじゃないすか。あといくら定番化してるとはいえ、オーディション番組発祥のものをオーディション番組でやるのは、オリジナリティに問題ありますよ」
プロデューサーは腕組みをしていたが、やがて首を振った。
「じゃ、なしで」
会議は踊る、されど進まず。しかし神演出は、得てしてこうした地味な話し合いから生まれるのだ。
バーチャルでエンディング妖精は撮影できますか? 刻露清秀 @kokuro-seisyu
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