第16話ー② むつきの罠…

「…ここが沙織さんの婚約者の…」


深大寺の墓地に着いた途端、一月むつきが慣れた様子でお花とお線香を用意する。

そこはむつきに任せて、俺は桶に水を用意していた。


「…それにしても…お墓参りに精通した女子高校生って…」

「仕方がありませんわね。お墓参りは日常茶飯事でしたから…」

「それでも…あの人達以外の墓参りは…初めてかな…」

「…そうですわね…お父さんお母さん、おじいさんおばあさん、五月さつきねえさま、おじさま、おばさま…」


あの日、俺達は…俺達以外の全てを失ったから…


「…沙織さんの喪失感…正直凄く分かったよ…自分のことのようにさ…それでも前に進んで聞こうとする強さも…」

「…おとうさま」


「…それでも、俺は恵まれている…お前たちがいるのだからさ…」



あの日、沙織さんと回ったのは…沙織さんの思い出の場所だった。

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818792436787224883


そして…



「…なるほど…どうして21時にはご自宅に戻られたのか不思議だったのですが、こんなカラクリがあったのですね」

「…カラクリ言うな!遅くなってお前たちを心配させたくなかったんだよ」


おとうさまが最後に車を走らせたのが…湘南の海辺のホテル。

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818792436626134623


「昼夜兼用で、16時にお食事をされていたとは」

「ここ、珍しくその時間でもディナーなんだよね」


湘南らしい白壁の明るいバルコニー席…もうすぐ夕景の時間…


「知りませんでしたわ…おとうさまってロマンチストだったのですね」

「悪かったね!」

「いいえ…きっとおとうさまは…そんなことも封印されてきたのですね…私達のために」

「そんなことはない」


おとうさまは笑って言う。


「人生のあり方を少し変えただけ…楽しませてもらっているよ…お前たちのおかげだな」


本当にそうなのだと思わせるおとうさまの笑顔…でも、私達の周りが善意だけではなかったこと…いいえ、悪意のほうがはるかに多かったことを私は知っている。


おとうさまは29才。私達が高校を卒業しても、まだまだおとうさまは若い。

イレギュラーとも言える私達との時間が終了しても…おとうさまの人生はまだまだ続く。


「…沙織さんは…」

「ああ…待つってさ。お前たちが巣立って…それでも一緒沙織とにいたいと思ってくれるなら…って」

「おとうさまは…」

「今はお前たちが一番だから分からないけど…時の果てにはそんな人生もあるのかもな…」

「…」

「お前たちはどうしているのかな?はづきは学校の先生志望だっけ…お前は…検事志望?…怖いね」

「ふふっ」


それでもねおとうさま…私の隣にはどうしても必要な人がいるのですよ。



「それで…先週はこのホテルのお部屋を取られていたのですね」

「うわあ〜そこまではっきり聞くかね」

「当然ですわ?わたくしですから」


沙織さんの雰囲気は…あの日以来はっきりと変わっていたから…きっとおとうさまと…


「まあ…お前に隠し事は通じないからな。ほれ…これが部屋の鍵だ…こんな感じでお部屋も取っておくんだ。後で部屋の雰囲気だけでも見てくれよ…寸分違わず…だもんな」

「分かりましたわ…寸分違わずですものね」

「じゃあ、早速だが食事といこう。ここは、イタリアン系の創作料理がお勧めなんだ」



「むつき、こんなときだからちょっとだけアルコール頼んでみるか?食事のお供に」

「…おとうさま…駄目ですよ?おとうさまも車なんですからノンアルコール…絶対ですよ!?」


―そして―


「う…うん…む…むつき?」

「おとうさま…お目覚めですか?」

「…これはどういう…なんで身体が動かない?」

「ふふっ」


「むつき…なんで下着姿なんだ?」

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818792436348469098



「…おとうさま…こんなにご立派に…大きくなられるのですね…今まで分かりませんでした」

「ま…まて…むつき…なにを…した?」


「…南ちゃんに相談しましたの…眠気が来て…身体が動かしにくくなって…とても敏感になるお薬を分けてもらいましたわ」

「…む…むつき?」


「もちろん…わたくしも服用致しました…一緒ですね…身体が…あつい」

「…まて…むつき…俺達は…」

「…今更親子だなんて…分かってますから…これは覚悟ですわ…わたくしはこれからも…おとうさまとずっと…ずっと一緒ですわ…」


湘南のホテルの一室…

わたしは…おとうさまと…身体を合わせる…



【回想:とある日のスタービックス】


「(まあ…良かったわ!これで一安心じゃ)」

「(詩織様神様…何を笑っておられるのですか?)」


「(そうじゃの…そなたには話しておこう。あの沙織はの…秀美をしのぐ前世のえにしをもっておるのじゃよ…三月との間にな)」

「(…)」

「(秀美と三月の縁は強い…しかもあまり良い縁ではない。心配しておったのだが、あの沙織という娘の縁は、秀美を凌駕しておる。これで安心じゃ)」


「(…わたくしは?わたくしやはづきは?)」

「(そなたたちに三月との縁はない)」

「(…)」


「(なんじゃ…なんでそんな顔をしておる?)」

「(詩織様…だって…)」


「(そなたたちに前世の縁は無い…ということは悪い縁もないのじゃ)」

「(…)」


「(もともと三月と縁のあった秀美や春、南は沙織の縁の影響を受けるじゃろう…だがそなたにはなんの影響もないのじゃ)」

「(詩織様)」


「(既にそなたとは同士の縁を結んでおるでな…妾はむつき、そなたの後ろ盾はやめんよ?そなたが諦めないかぎりな)」


―そして…


この日のおとうさまとのデートで…わたしは処女を卒業した…




第一部 完




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