【閑話】 三月なんぞに秀美はやらん!

妾の名は天宇受売命猿女君詩織姫、古くは天照大御神様の天の岩戸事件にも関わりを持つ古い神じゃ、せいぜい崇めたてるが良い。

どうじゃ恐れ入ったか!

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818792435922298617


…あまり恐れ入られても寂しいのでのう…

妾のことは、詩織と呼ぶが良いぞ。

今の依代の秀美など、物心ついたころから、妾のことを「し〜ちゃん」などと呼びよる。

全く嘆かわしいやら…べ…別にほほを緩めてなどおらん!失礼なやつじゃな!


…え…聞き取りにくいから普通に話せと…


し…仕方がないわね…今だけなんだからねっ!


全くあなたみたいな失礼な子ははじめてよ。

さすがはあの三月の娘ね。親も親なら娘も…

…待って待って!…そ…その、瞳のハイライトを一切消した黒目の無表情は止めてっ!

何故かわからないけど、あの世に帰りたくなるわ。

あんた本当に人間なの?


あ…あたしは大切な秀美をあんなクソガキ…待って待って!…み…三月なんかに渡したくないだけ。


…え?…全く同意?

ではあんたとわたしは同士ねっ!!



全く…あの三月という男は、はじめて見たときから気に入らなかったのよ。

大体、何よ。自分は「文ねえ」とやらとの初恋をいつまでも引きずってからに、同級生であるのをいいことにまんまと秀美の純情を弄びよって。

秀美はうちの大切な舞姫なんですからねっ…え…結局怒って実家飛び出して珈琲店の店長じゃないかって?しょうがないじゃない秀美ってば頑固なんだもん。


あんときだって、あたしがあれだけ邪魔してたのに、一瞬の隙をついて大切な初体験をあんな男に捧げてしまうし。

…え…なんでもっとしっかり監視しなかったのか?


だ…だって、ちょうどSM○Pっていう、全然売れていなかったんだけど面白そうなアイドルグループが出てきていて応援したかったんだもん。

私の見る目に間違いはなくってその後は国民的なアイドルになって…さすがあたし…腐っても芸能の神…待って待って!…だからあんたの単一色の瞳の無表情怖いんだって!…アイドル見に行って監視を怠ったって言われたらその通りだけどさ。


しょうがないじゃない…よっぽど身体の相性が良かったのかそれからず〜っと「アンアンアンアン」やってるんだもん。そんなの見てらんないわよ。

…って、あんたは昔の話で無表情になるのやめなさいって!今更だしこっちだって反撃の機会を練っていたのよ。


だからちょうどあんたらがあの男の養子になるってタイミングで神主殿の夢見に出てやったの。

「あんな男を許すな」って。


作戦は大成功!

あとはあんたたちも知っての通り。

…え?…グッジョブ?

どういう意味か今ひとつ分からないけどきっと良い意味なんだよね!


ただ…秀美…諦めてないのよね…三月のこと。

あんたらが成人したら寄りを戻せると考えてるみたい。


だからここからはあんたの出番が多くなるわ。

良いこと?

秀美と三月の復縁なんか絶対阻止だかんね。

そのためならあたしはあんたの後ろ盾になるのも厭わないんだから。


良いこと?一月むつき

絶対よっ!



その日…店長さんが新しいバイトの子と一緒に仕入れに離れたスタービックス伊勢佐木町店の片隅で、ブロンズ像のように美しい女子高生が一人でブツブツ言っている不思議な現場が、何人もの常連客の間で確認されていたそうな。

…ちゃんちゃん。


第二章 ガキの頃の三月に続きます。


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