なぜなのお月様
トイボン
なぜなのお月様
とおいとおい昔のこと、動物たちが人間のように、みんなでおしゃべりをしていた時の頃のお話です。
その頃の世界には一日の終わりにやってくる夜がありませんでした。
何故かというと、その頃のお月さまは、お日さまと同じくらいに明るく空で輝いていたからなのです。
お日さまが東の空から走り始めて西の空へたどり着くと、顔を赤くして息を切らせながら自分のお家へ帰って行きます。
すると今度はお月さまがお日さまに負けないくらいに明るく輝いて、東の空から西の空へ向かって走り始めるのでした。
そのために空は一日中明るくて、暗くなる夜がなかったのです。
空が暗くならないのだったら一日中外で遊べていいな。なんて思うでしょう。
けれどもよく考えてみてください、暗い夜がなければ暖かい布団の中でゆっくり休むことなんて出来ないのですよ。
その頃の空はいつも明るいので、動物たちはいつも忙しく動き回っていて、ゆっくりお家で休むことが出来なかったのです。
動物たちは眠って休むことが出来ないので疲れてしまい、本当に困っていました。
それで動物たちはみんなで集まって相談をしました。
ライオンの長老がみんなに向かって大きな声で言いました。
「いつも空が明るくてゆっくり休むことが出来ない。みんなが疲れて困っている。何か良い知恵はないだろうか?」。
すると誰かが言いました。
「お日さまとお月さまにお願いして、東の空から西の空へ向かって走るのを時々休んでもらおうよ。」
「それは良い考えだ、お日さまとお月さまにお願いしよう。」
とライオンの長老が言いました。
「そうしよう、みんなでさっそく明日お願いをしに行こう。」
と皆は声を揃えて言いました。
意見がまとまった動物たちはそろって、お日さまのところへ出かけて行きました、そしてみんなでお日さまに向かって、
「こんにちはお日さま、毎日私たちのために空を明るく照らしてくれてありがとう。でも時々はお休みして私たちを眠らせてほしいな。」
とお願いしました。
すると、お日さまはニッコリ笑って言いました。
「いいともさ、では曇りの日と雨の日には私はお休みしよう。」
動物たちは大喜びでお日さまにお礼を言って、今度はお月さまのところへ行きました。
「こんにちはお月さま、毎日私たちのために空を明るく照らしてくれてありがとう。でも時々はお休みして私たちを眠らせてほしいな。」
と今度もみんなでお月さまに向かってお願いしました。
けれどもお月さまの返事はよくありませんでした。
「いやだね、私はお日さまに負けたくないのだよ、だから私はお日さまよりも明るく空を照らしたいんだ、残念だけれども君たちの願いをかなえてあげられないね!」
それを聞いた動物たちは、「お日さまは私たちの願いをかなえてくれて、くもりの日と雨の日はお休みしてくれると約束してくれたんだ。」
と言い返しました。
それを聞いたお月さまは、「それは良い、
それでは私がくもりの日と雨の日に、お日さまに代わって空を明るく照らしてあげよう。」とニヤリと笑って言いました。
お月さまの意地悪な返事に、動物たちは驚いてガッカリしながら帰っていきました。
お月さまのところから帰ってきた動物たちは集まって、みんなで話し合いました。
「お日さまは優しくて私たちの願いをかなえてくれたのに、お月さまは願いをかなえてくれるどころか、私たちに意地悪をする。そんなお月さまなんかみんなで懲らしめてやればいいんだ!」
と誰かが言うと。
「そうだ!お月さまが出てきたら石を投げつけてやろう!」
と、別の誰かが答えて言いました。
「そうしよう!そうしよう!」
皆が声を合わせて言いました。
次の日、お月さまが東の空に顔を出した時、その時を待っていた動物たちは、いっせいにお月さまに向かって石を投げつけました。
すると石が当たったお月さまの顔から、キラキラ輝きながらお月さまのカケラが飛び散りました。
「イタイ!イタイ!」
お月さまは悲鳴をあげます。
それを見て動物たちは面白がって、石をどんどんどんどんお月さまに向かって投げつけました。
石が当たるたびにお月さまの顔からはたくさんのカケラが飛び散って、キラキラキラキラ輝きながら空いっぱいに広がっていきました。
けれどもそのかわりお月さまの顔は穴ぼこだらけになり、だんだん暗くなっていきました。
そしてとうとう、お月さまは大声で泣き始めてしまいました。
すると、その泣き声を聞いた神様が、何事が起ったのか? と急いで様子を見にきました。そしてお月さまに向かって石を投げつけている動物たちを見つけると、世界中に響き渡る大声で
「こんな悪さをする動物たちは、二度とこんな悪さの相談が出来ないようにしゃべれなくしてやろう!」
と動物たちを叱りました。
その大声を聞いた動物たちは慌てて、神様に訳を話そうとしましたがもうすでに動物たちの声は言葉にはならず、口から出てくるのはうなり声だけになってしまいました。
それからというもの、お月さまが東の空から出てくるときには、必ず石を防ぐための丸いお盆を持って出てくるようになりました。そして丸いお盆の後ろから穴ぼこだらけになった顔を、恐る恐る出したり引っ込めたりを繰り返しながら西の空へ走っていくようになりました。
そして空いっぱいに広がったお月さまのカケラは、いつもキラキラキラキラ輝きながら暗くなったお月さまを助けるように、暗くなった空を一緒に横切るようになりました。
こうして動物たちは願い通りにゆっくりと眠れる夜を手に入れることが出来ました。
けれどももう二度とみんなが集まって、仲良く話しあうことは出来なくなってしまったのです。
そうそう、犬がお月さまの丸い顔を見て少し悲しそうに、ワォーンと鳴くのはもしかしたら、「お月さまごめんなさい。」と謝っているのかもしれませんね。
おしまい
なぜなのお月様 トイボン @TOIBON
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