最後の願い
天蝶
第0話
かつて、小さな村の近くに美しい森があり、その森には小さな妖精が住んでいました。
その妖精の名前はリリィ。
彼女は色とりどりの花々に囲まれて、毎日を楽しんで過ごしていました。
村人たちもリリィの存在を知っており、彼女が森に舞い降りるたび、笑顔で手を振っていました。
リリィは村人たちを特別に思い、いつも優しさで包み込んでいました。
ある年、村は異常な干ばつに見舞われました。
過酷な陽射しが土地を焦がし、川も干上がり、作物は枯れ、人々は水を求めるために疲れ果てていました。
村人たちは困り果て、リリィのことを思い出しました。
「リリィなら、何か助けてくれるかもしれない」と。
リリィも村人たちの困難を見て心を痛めていました。
彼女は「私が何とかしなければ」と決意しました。森の奥深くには、伝説の魔法の水が湧き出る場所があると聞いていたからです。
それは、命の水とも呼ばれ、手に入れた者に大きな力を与えると言われていました。
しかし、この水を使うことで妖精は自らの命を削ることになるのだと知りながら、リリィは村のためにその水を求める旅に出かけました。
山を越え、川を渡り、不安を抱えながら進んでいきました。
彼女は食事も忘れ、休むこともせず、力の限りを尽くしました。
そしてとうとう、目指す場所にたどり着きました。輝く水が流れる泉が目の前に広がり、その美しさに息を呑みました。
しかし、近づいてみると、その水は妖精の命と引き換えにしか手に入らないことが分かりました。
リリィは涙を流しながら、お別れを告げました。「私の力をくれて、村の人たちを助けるために、どうかお願い。私のことを忘れないで。」
リリィは決意を持って、魔法の水をすくい上げ、村に戻りました。
村に着くと、彼女は小さな瓶から水を注ぎ、枯れた大地に優しく振りまきました。
すると、奇跡が起こりました。
乾ききった地面が潤い、枯れた作物が息を吹き返し、川も再び流れ始めたのです。
村人たちは驚き、歓喜の声を上げました。
「リリィのおかげだ!彼女が助けてくれた!」
しかし、喜びの中、リリィは弱り果て、徐々に透明になっていきました。
村人たちがその様子に気づくと、彼らはリリィに近寄り、「何が起こっているの?」と問いかけました。
しかし、リリィは微笑みながら言いました。
「私の力は、あなたたちの幸せのために消えてしまうの、あなたたちを愛しているから。」
そしてリリィは、最後の一筋の光となり、空に昇っていきました。
村人たちはその光を見上げながら、涙を流しました。
「ありがとう、リリィ。あなたの心は、私達の心と永遠に」
村は毎年この日のことを思い出し、リリィを讃える祭りを開くことにしました。
彼女の無償の愛と自己犠牲は、村人たちの心に永遠に生き続け、人々が助け合い、感謝し合う大切さを教えてくれることになりました。
リリィの存在は、見えなくなったけれど、その愛は村の中でいつも輝いていました。
最後の願い 天蝶 @tenchoo
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