短編【とある森での逢瀬】

@siaumiKA

泣き声

とある森の中、それはそれは平凡な男が木を切っていました。

カーン、カーン、大きな音が森の中に響きます。

そしてそれをこっそりと見守る一人の女性がいました。彼女は美女と称される女性でした。

なぜ彼女がこんな所にいるかというと、彼は平凡な男が好きなのでした。美女は平凡な男に今日こそは告白しようと意気込んでいます。

そうです美女は何度も同じ決意をしているのです。

そんな事を露知らない平凡な男は今日のノルマの木を切り終え今から休憩に入るかというところです。

それに気付いた美女は平凡で勤勉な男性に声を掛けようとしますが、美女は声が出ませんでした。その時平凡な男性が美女の方に振り返りました。

「やぁ、今日も来てくれたのかい。」

美女は努めて平静な振りをしながら頷きました。

「嬉しいよ」

平凡な男が美女にそう言います。

美女は狼狽してしまいます。

「ほらこっちおいで。いつもみたいにここに座りなよ」

平凡な男性は自分の隣を指して手招きしました。

美女はそんな平凡な男性の気づかいが嬉しくて頷いて隣に座りました。

それから二人はただ座っていました

何かを言うでもなく何かをするでもなく。

それからしばらく時間が経ち平凡な男は言いました。

「さぁ、そろそろ君も帰る時間だよ。僕も帰らなきゃ」

美女は結局今日もまた告白出来ませんでした。

「早く帰るんだよ。そうじゃなきゃ僕が叱られちゃう」

そして美女は名残惜しそうに男性の方を一回振り返ると帰路に付きました。




それから後家についた男性は妻に尋ねられました。

「また例の子と逢引したのかい?危険だからやめなって言ったのに」

平凡な男性はそれに対してこう反論しました。

「いいや彼女は気高く美しい女性だよ

僕は彼女ほどの美女は知らない」

妻は呆れ果ててもう何も言えませんでした。

平凡な男性も本気で心配してくれてるのはわかってます。ですが平凡な男性に取っては美女との逢瀬が楽しみなのです。

アオーン。どこかから美しい遠吠えが響いていました。

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