第33話J
そして当日、
「クライン!、起きて!」
「うっ!」
お腹の上にいきなりもうドレスに着替え終わったチェリサ飛んできた。どこまでおてんばなんだか。
ふっ、と笑ってしまった。
「今笑いましたね、私あなたの笑っているところ初めて見ました」
「そうですか、あんまり僕はたぶん感情豊かじゃないのでこれからも見せるかはあんまりないでしょうけどね」
俺が胸を軽くはって言う。
「そう言う、胸を張って自慢げに言うのも感情の一種なの知ってました?」
•••うっ、心にきた。ごもっともだ。恥ずかしい、
「もう一回寝ます」
俺は顔を隠すついでに布団に入る。
「やはりそうなりますか、クライン!、では、スキレア子爵お願いします」
誰だよスキレア子爵って?
「うぉー」
俺はいきなり布団を引き剥がされ、首元を掴まれた上で投げ飛ばされた。
本当に誰だよこんな雑なことする貴族!
「よぉ、久しぶりだなお迎えに来てやったぞ、幼児」
そこには綺麗に光沢を放った黒のスーツを身に纏ったエリックがいた
「エリック!」
俺は驚いて立ち上がる。
「スキレア子爵だよ、ここでは」
エリックは人差し指を伸ばして唇に当てる。多分、そのことは黙っていろということだろう。
「後、30分でここを出なきゃいけないからすぐ支度をしろ」
そう言ってエリックは部屋から出て行ったのだが
「おい、てめぇ、ふざけやがって!」
「あぁ、そんなこと早めに言えよ!勘違いしてたじゃねぇかよ!クソジジイ」
「俺もそれ聞いてねぇぞ!、どうすんだ?」
とこの後も長々と廊下から、ベラ、ルバエナ、エリックの喧嘩の声が響いていた。だが、どう聞いてもルバエナが二人に責められているようだった。
「何やってんだお前!」
ゴンっ、と何かと何かがぶつかった音がしたのだが多分勘違いだろう。
「おい、用事が色々があるんだ•••外で待ってるぞ」
股間をおさえながら腰を曲げて下を向きながら、顔色が明らかに悪いルバエナが入ってきた。
俺は慌ててスーツに着替え、首元の護衛用ネックレスがきっちり見えるようにシャツの襟元の上に置いた上ジャケットの位置を調整しつつ外に出た。
今日のジャケットは少し短めのコートのような長さであり、少し脇腹よりで三つのボタンを閉める式のため、前は開けていく。単にきついからだ。
玄関の大扉を開けるとすぐそこは街を一望できるようなところだった。こんな立地のところに家が立っていることを考えると今、自分が頭ひとつ抜けた高位の貴族の家に無償で泊めてもらっていたことに気づいた。
「おい、ルバエナ、これ」
「つけといてくれよ、•••にしても高すぎだろ!これ」
いや、全然無償じゃなかったわ。むしろ多分俺が見たら絶句するぐらいの値だと思う。
「ちょっとやることがあるから早く行くぞ」
全員で車に乗り込んで走り出す。
道路を走り出した僕らの3つの車の陣形は、先頭が俺とエリックが乗っているこの車、中間がルバエナとチェリサが乗っている車、最後にベラが乗っている車といった感じだ。
車が王都の中心街に入った時、街はお祭りムードだった。
「エリック、街が何でこんなに盛り上がってるの?」
「は?、お前知らないの?」
エリックは少し驚いた顔を運転しながら見せた。
「明日は建国記念日だ、逆にお前何のパーティーだと思ったんだよ」
エリックが少し笑いを見せた。
王都は馬車や車が同時に走れるように前後の道四車線があるのだが、この時だけ2車線になるぐらい人々の活動が活発になるし楽しい雰囲気が漂っているはずなのだが、
「クソっ!、誰だよ前の馬車乗ってるやつ!」
俺たちは前の馬車が事故ったのか不都合なのか30分ほどその場で止まっていた。
「俺もう行ってくる!」
エリックはかなりイライラした状態で車から降りて馬車に駆け寄って行った。
が、馬車の中を見たエリックはすぐ作ったのが丸わかりのニコニコした様子で戻ってきた。戻ってきたエリックは一言
「あれには抗えないわ」
と急に怯えた様子で帰ってきた。
本当に情けないな。
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