第4話「妖精は、いた?」

 森の奥にたどり着くと、小さな川が流れていた。


「うわぁ……綺麗。」


 川面には、春の光が反射してキラキラと輝いている。風が吹くたびに、水面がゆらゆら揺れて、小さな光の粒が踊っていた。


「……あれ?」


 萌菜が息をのむ。


 水面の上を、淡い光がふわりと揺れている。


 まるで、小さな妖精が舞っているかのように。


「これは……。」


 綾祐が口を開く。


「水の中に沈んだ鉱石が、太陽の光を反射してるんじゃないか?」


「えぇ? そんな現実的な説明、しなくていいでしょ。」


 亜祐美が軽く笑う。


 すると、上岡豪宏 がにっこり笑った。


「どっちでもいいんじゃない?」


 彼は他人の成功を応援し、自分を信じるタイプだ。


「妖精だと思えば妖精だし、光の反射だと思えばそれも正しい。結局、何を信じるかは自分次第でしょ。」


 その言葉に、学はふっと微笑んだ。


「そうだな。」


 みんながそれぞれに、自分なりの答えを見つけることができたなら、それでいいのかもしれない。


 「妖精は、いた。」


 そう思ったのなら、それは本当に「いた」ことになるのだから。


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