第3話

「ほら、まりちゃんも何か注文して」

私はボカロを忘れさせるためにまりちゃんに注文を催促した。


「じゃあ、コーヒーお願い」


「それはさっき言った言葉の中にない」おかしな返答にとりあえず私はツッコミを入れる。


「言った中にはないけどコーヒーの中にボカロがある!」と澄まし顔で決め台詞。


「え、ど・こに?」まりちゃんの妙に自信がありそうな返答に私は焦って言葉が詰まった。


「コーヒーを漢字で書くと珈琲」漢字を指でなぞる。


「ななっ!?」


「珈の部首の王がボで残りの「力(ちから)」に「口(くち)」はカタカナの「カ」「ロ」って文字が隠されているの。ね、そう見えない?」


「まぁ見えるけど・・・漢字の部首は全く関係ない。あはは、ははは」

なんと率直な変換で真正直。純粋すぎて可笑しい。


あ~あ、ボカロの話思いだしちゃったなと思いながらカウンターの方を向きカフェ店員を呼ぶ。

「すみません、コーヒーを追加でお願いします。」


コーヒーはメニュー表5,6ページの所に種類と値段が書いてあった。


しかし、ここであきらめない私は注文作戦第2弾を開始!花(ボカロ)より団子という言葉もあるし。


「お菓子も注文しよう!ほら、ここにまだ食べてないスイーツ発見!」

6ページ目には洋菓子のメニューが記載されていた。


「そうねぇ、コーヒーだけだと胃がもたれしそうだし食べようかな」


食いついた!私は平然を装って会話を続ける。


「先月食べたクッキー美味しかったよねー、今日はフルーツケーキを食べよう」と押し通す、今回は選択権を与える隙を作らない。


「それじゃあ美伊に任せる」


「何回もすみません、あとフルーツケーキを2個お願いします」


ウエイトレスさんがやってきてにっこり笑いながらメニュー表に書き留め戻って行った。

畳み掛けるように追加注文した私の言葉にまりちゃんは抵抗感を含む返事をしたが別に私は構わない。弱ったところを引き上げればこっちのものだ。


フルーツケーキはおそらく名称通りケーキだろう。メニュー表には※フルーツはStrawberry,blueberry,Orange,Kiwi ,honeydew,lemonなど旬のフルーツを使用するため季節によりフルーツが変わります。と説明が書いてあった。


「まりちゃん、先月のクッキーの香り絶妙だったよね。あの甘い生地にクリームレモンと胚芽、ナッツのパウダーが混ざって口の中で香ばしさが広がっていく感じが」


「そうそう、口の中で混ざった時のハーモニーは素晴らしかった。私が雑誌のスイーツ審査員だったらクインテットフレーバー賞を贈ろうと思う。あれは私の記憶の中でまた食べたいメニューに入っている」


「私もまた注文したいなあ、あの時まりちゃんは口を尖がらせていたけどね」


「それは美伊が材料は生地を含めて5種類っていうから胚芽を探すために細かい所まで噛んで探していたから」


「同じものを注文して材料が違う何てことあり得ないし数は二人とも同じになるはずだもん」


「見て!ケーキにもlemon(レモン)が使われているって書いてあるよ」


「lemonは木に実るからフルーツ。kiwiってキウイフルーツの事で合っている?」


「合ってると思う」


見事にボカロ語をしゃべらせないことに成功した私は満面の笑み


「へぇ~、英語でkiwiって言うんだ。キウィキウィ」


「う~ん生まれたばかりの雛みたいで可愛いけど、言い方はキ・ウ・イ」


「キウイキウイ」


「あーはいはいキウイ夫人、ご用件は何でしょう?」


「何それー」


ここは大人の世界、キウイ連呼まりちゃんは鳥のように扱われない。よくても猿だろう。言ったら怒るだろうから言わないけど。


現在、まりちゃんはスマホ片手にタップしている。その転身のはやさは折り紙付きで天真爛漫な性格なのであった。


私は親に「小学生にはスマホは早い」と持たせてもらえなかったので飲物とケーキが届くまでまりちゃんのスマホいじりを見たり、手帳や本を見たり悠々自適に喫茶店ライフを過ごした。また、という言い訳。


この喫茶店にはいつも背の高い女性のマスターと普通くらいの背丈のアルバイト?の若い女性のカフェ店員がいた。マスターの方は白いシャツに黒いスカートのようなパンツ、赤いバンダナとタイをまいて甲高い声とくっきりとした顔立ちの表情がちょっと怖い。

若い方はフリルがついた茶色の制服と茶色の靴、白の光沢のあるスカーフを巻いておとなしそうな顔と良く通る声だった。

マスターがカウンターで調理をしてウェイトレスが運ぶ。

このお店のお客さんがほとんど女性のみで学校では話せない事を話せるので快適な空間と言える。

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変わるガール 斉藤める @meloo-

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