夢の林檎と夢見るさくら
碧居満月
漫画の妖精 メロディ
赤いベレー帽を被った、黄緑色のロングヘアに桜色の服とスカートを
わたしは、幼稚園生だった頃から絵を描くことが好きで、将来の夢は漫画家になる、と決めていた。そんなわたしの面前に妖精の彼女が姿を現したのは、自宅から徒歩圏内にある市立小学校の入学式でのことだった。
二年間、通い慣れた幼稚園から卒業してすぐに、まだ見慣れない、小学校の体育館、その場所で
「大丈夫よ。もう少しで、式は終わるから」
そう、横一列に並ぶ椅子のひとつに座り、前を向きながらも、両肩が上がるほどガチガチになっているわたしを励ます女の子の声が、すぐ傍で聞こえた。その声で、はっとしたわたしはきょろきょろと周りを
後ろの席の人が、わたしに声をかけてくれたのかな……? それとも、緊張するあまり、
確かめるためとは言え、さすがに振り向く勇気がなかったわたしはただただ、不思議に思うだけだった。
緊張の入学式が終わった後は、各教室へと移動、そこで担任の先生から話を聞いてその日は解散となった。
「じゃあ、また明日ね!」
「うん! じゃーね!」
同じクラスになり、早速友達になった
「お友達ができて良かったわね!」
ピカピカのランドセルを背負って、黙々と歩くわたしに話しかける女の子の声。
さっきも入学式中に聞いたその声がまた……もう緊張はしていないのに、幻聴がする。よっぽど疲れているのかな?
「ちょっと! わたしのこと、無視しないでよ!」
憤慨する女の子の声がまた聞こえたが、これも幻聴だろうとわたしは無視し続ける。
「……いい加減、反応してあげれば? さっきから、さくらに話しかけてる妖精が、かわいそうじゃん」
後ろから追いついた
「妖精……?」
幼馴染みの一弥から出た『妖精』のワードが引っかかり、わたしは怪訝な表情をする。
「赤いベレー帽を被った妖精だよ。ほら、そこにいるだろう?」
一弥はそう言って、おもむろに手を伸ばし、わたしと手を繋ぐ。すると……
赤いベレー帽を被った、黄緑色のロングヘアに桜色の服とスカートを穿き、天使のような、無色透明な翼が背中にある、小さな女の子の姿が、そこにあった。
「初めまして! わたしは、メロディ・ウォータ……漫画の妖精よ!」
「漫画の……妖精?!」
まったく予想もしていなかった事態に遭遇し、動揺したわたしは驚きの声を上げる。これが、わたしと漫画の妖精、メロディ・ウォータとの出会いだった。
わたしは、幼稚園生だった頃から絵を描くことが好きで、将来の夢は漫画家になる、と決めていた。そんなわたしのもとに、かわいい妖精が訪れて来るとは
驚きはしたが、妖精の姿が見える一弥の支えもあって、次第に慣れてきたわたしは、イラストの描き方と漫画の作り方を教えてくれるメロディと友達になった。
そうして、メロディと一緒に基礎からイラストと漫画の創作を学び、それから三年間の修行期間を経て、わたしは『
了
夢の林檎と夢見るさくら 碧居満月 @BlueMoon1016
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