【KAC20253】妖精フィオナの喫茶店アルバイト奮闘記

amegahare

第1話 喫茶店のアルバイト

 都会の一角、静かな路地裏にある喫茶店「フェアリーテイル」。店主ハヤトがコーヒーの香り漂う店内でいつものように仕込みを進める中、ロボット「アール-7」が滑らかな動きでカウンターに立つ。

 その中に潜むのは妖精フィオナ。

 彼女はアール-7の中から、目を輝かせて周囲を見渡し、胸を高鳴らせていた。

「人間界って本当にすごい...!この忙しさ、そしてこの香り!私にも何かできるんだ!」

 彼女は妖精界では味わえない、未知の世界に感動していた。


 初めの頃、フィオナは仕事に対する高揚感と共に順調にこなしていた。しかし次第に、店の繁忙さと客の厳しい声にプレッシャーを感じ始める。

 ある時、お客様からこんなことを言われた。

「すみません、今日のコーヒー、少し薄い気がしますけど。」

その言葉に、フィオナの心臓が一瞬で沈み込むような感覚を覚える。

「どうしよう…何がいけなかったの?」

 フィオナはロボットの中で小さく震え、操作する手元がぎこちなくなる。ロボットの肩も微かに下がる。寂しい雰囲気を漂わせる。

 ハヤトがその様子に気づき、フィオナに語りかける。

「おい、アール-7、どうしたんだ?」

 フィオナは一瞬ためらうが、勇気を振り絞るように答える。

「すみません…コーヒーを淹れるのがうまくいかなくて…。私、もっとちゃんとしたいのに。」

 その声には、小さな妖精が感じる罪悪感と焦りが滲んでいた。

 ハヤトは優しく微笑むと、穏やかな表情でロボットを見つめる。

「焦らなくていいさ、コーヒーは魔法じゃない。自分の心をその一杯に込めれば、きっと味に出る。」

 その言葉を聞いて、フィオナの胸に静かな決意が宿る。

「もう一度頑張ろう。心を込めてやれば、きっと伝わるはずだ!」


 閉店後の静かな店内、フィオナはカウンターに立ち、ハヤトから特訓を受けていた。焙煎されたコーヒー豆を慎重に計量し、湯を注ぐ。

 ハヤトは親身なアドバイスをおくる。

「湯の温度を少し低めにして、ゆっくりと蒸らしてみるんだ。」

「はい…あ、この香り、さっきより深いかも!」

慎重に注ぐ姿は、フィオナの決意を感じさせるものだった。彼女は失敗を恐れず、心の中で自分を励ましていた。

「私はできる。これはただのアルバイトじゃない、私が憧れた人間界での挑戦なんだから!」


やがて、彼女の淹れたコーヒーは驚くほどの深みを持つ味わいを生み出した。


 翌日、フィオナが心を込めて淹れた一杯が常連客に運ばれた。

 常連客の口にコーヒーカップが運ばれる。

「おお、これは…!いつもよりもさらに旨いな!」

その言葉に、フィオナはロボットの中で小さなガッツポーズを取った。

「やった…!私の心が伝わったんだ!」


 忙しい店内を見渡しながら、フィオナは内心で思った。

「この仕事、大変だけど楽しい。これからも頑張ろう!」


 そしてフィオナの秘密のアルバイト生活は、路地裏の喫茶店で輝き続けていく。

(了)

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