第19話:半島の戦い

「半島は陸続きではないから危険だ。

 日本人を憎んでいる人がいるからモンスター以外の危険もある。

 特に女性には男性と違った危険がある、今回は日本の防衛に残ってくれ」


 克徳は高井彩葉を始めとした女性信徒たちに言う。


「嫌です、危険なのはモンスターと戦うと決めた時から分かっていた事です。

 女性としての危険も、モンスターと戦う以上どこでも同じです。

 私たちも国会議員です、国民のために命を賭けて戦うのは当然の事です」


「分かった、君たちにそこまでの決意と覚悟があるなら参戦してもらう。

 だが俺が撤退しろといったら文句を言わず即座に撤退しろ。

 約束できなければ女性は誰も連れて行けない、どうだ?」


「分かりました、克徳さんの指揮に従います」


 克徳たちは空を駆けられる神使を中心に半島に向かった。

 信徒は騎乗させてくれる神使の数だけ出陣した。

 神仏は、空と海の平信使を無数に任命して戦いに備える。


 水生神使たちは、水生モンスターの奇襲を受けないように、日本を囲み守るように排他的経済水域全域に広く布陣した。


 空を飛べない陸生神使が日本に残り、空や海を突破された場合に備える。

 戦えない大半の日本人はダンジョンに逃げ込んだが、この期に及んでも邪神だけを信じる狂信者がいるので、そんな連中は教会独自の防魔室に逃げ込む。


 克徳たちは半島民主主義国の領空に入ってモンスターたちと戦う。

 異世界で中級魔族を簡単に斃した克徳だ、下級魔族程度には負けない。

 同じく異世界で下級魔族を斃した神使たちはウィンドドラゴン程度には負けない。


 独裁国のゲートを閉じるために、克徳と選抜された神使が別行動をとる。

 他の多数が主力となって、半島上空でモンスターたちと戦う。

 数はモンスターの方が多いが、神使たちの方が圧倒的に強い。

 

 神使たちは弱いモンスターを無視して敵の大将を狙う。

 モンスターたちを縦横無尽に斬り捨てて、一直線に敵の大将を狙う。

 今はまだ下級魔族しかゲートを通れないので、今のうちに斃そうとする。


「魔族やモンスターに地球は渡さん!」


 田中元1等陸曹が叫びながら下級魔族に斬り付ける。

 騎乗する爪天虎神使も息を合わせて下級魔族を討とうとする。

 だが下級魔族も、騎乗するアースドラゴンと息を合わせて迎え討とうとする。


 騎乗してのドッグファイトが繰り広げられる。

 ライブ配信を観ている世界中の人たちが、手に汗握って真剣に応援する。

 真剣な応援が祈りとなり、膨大な信仰力が田中たちに届き神通力と成る。


 一気に強くなった田中元1等陸曹の槍を受けきれずに、下級貴族が心臓を刺し貫かれるが、実戦経験が蓄えられているので油断しない。


 下級魔族とアースドラゴンが生き返らないように身体中を斬り刻む。

 克徳がやったように、顔からお尻まで唐竹割りにする。


「俺も負けてられるか!」


 もう1魔の下級魔族と熾烈な戦いを繰り広げていた、佐竹元1等陸曹もライブ配信で神通力を得ていた。


「ぎゃっ!」


 いきなり強大に成った力を直ぐに使いこなすのは難しいが、突進と突きなら強大に成った力に振り回されずにすむ。


 田中元1等陸曹と同じように心臓を貫いて下級魔族を斃す。

 とどめの差し方も同じで、下級魔族を小間切りににする。

 強大に成った力を直ぐに使いこなせるように、弱小モンスターを斃して練習する。


「今度は善良な人間に生まれ変わってきなさい」


 肩口から鞭のような槍のような物を生やした強大な触手天虎神使に騎乗する高井彩葉が、なぎなたで斬り殺した下級魔族に言う。


 高井彩葉を始めとした女性信徒たちは、男性よりも多くの神通力を得ている。

 そのお陰でとてつもなく強くなっているで、下級魔族を圧倒していた。

 神通力を得るためにライブ配信や動画投稿するのは正解だった。


 ライブ撮影をしているのは背中に羽を生やした猿神使たちが多い。

 中には天犬に騎乗した人間も撮影している。

 強化成長進化した虫や鳥の神使たちも身体にカメラを付けて撮影している。


 純粋に戦う事だけを考えれば、カメラを身体に装備するのも撮影に気を使うのも不利で、カメラなど持たずに戦いに専念した方がいい。

 最悪の場合は、撮影に気を取られて実力を出せずに死んでしまう事もありえる。


 だが、後々の事を考えれば、危険を承知でやるしかない。

 少しでも多くの神通力を得る事が、異世界神を斃す事につながる。

 最悪の場合は、邪神に裏切られて異世界神と同時に戦う事も考えている。


 だから少しでも多くの邪神の信徒を、日本の神仏に帰依させたい。

 せめて邪神と同時でも良いから、日本の神仏も信じるようにさせたい。

 両方同じ様に信じたら、日本人信者の分だけ神仏の方が強くなる。


 悪い考えだが、信徒に裏切られたと知った邪神が怒り狂って信徒を殺してくれたら、邪神は克徳たちを視聴した信徒の多くを失う事になる。


 それが広まれば、よほどの狂信者でなければ邪神に疑いを持つ。

 邪神を信じなくなり、日本の神仏だけを帰依してくれるのなら最良の結果になる。


 邪神がそこまで予測して、日本の神仏と邪神を同時に信じる信者を見逃したら、邪神に捧げるのと同じくらいの神通力を日本の神仏が得られる。

 いや、古からの日本の神仏ではなく、克徳個人が膨大な神通力を得られる。


 公平な目で見ると、今は日本の神仏の方が邪神よりも圧倒的に弱くて不利なのだ。

 邪神に比べると、表向きの信者が1/5しかいない上に、その信者の信仰力も無数の神仏に分散する。


 5倍の信者が1柱の邪神に信仰力を捧げているので、圧倒的に不利なのだ。

 だからこそ、少々非人道的な手段を使ってでも、少しでも信者を改宗させたい。

 そしてその少々非人道的な作戦は成功していた。


 最初は克徳たちを応援する信徒を殺していた3大邪神だが、狂信的な信徒以外は、同じ人間が命懸けでモンスターと戦う姿を見れば、応援したいのが普通だ。


 3大邪神は、殺した信徒に数千倍する信徒から疑われ、目に見えて信徒が減り神通力も減ると知って、自分と日本の神仏両方を信じる信徒を殺さないようにした。


 だが、そんな身勝手な方針転換程度では信者の離反を減らせなかった。

 邪神が卑怯下劣で欲深いのと同じように、神官たちも上から下まで腐っていた。

 日本の神仏と違って、邪神は堕落した神官にも神通力を与え天使にしていたのだ。


 暗黒時代のように、天使に成った神官が私利私欲に走り好き勝手している。

 信徒の金銭や家を奪い、幼少の者を犯し、信徒の妻まで奪う。

 そんな状況を内心で激怒している、形だけの信徒も多い。


「地上にいる魔族とモンスターを探し出して殺せ」


「「「「「おう!」」」」」


 騎乗した信徒たちは、空を駆ける強大なモンスターをひと通り斃すと、地上で人間を襲っているモンスターの討伐に向かった。


 地上の人たちが襲われているのは分かっていたが、上空にいる強大な魔族やモンスターを斃さずに地上に向かうと、背中から討たれて死ぬ事になる。


 死んだ者に人を助ける事などできない。

 どんな苦境でも生き残り続けるからこそ、人を助け続けられるのだ。

 苦渋の決断をして、上空のモンスターをある程度斃してから人助けを行った。


「助けて、助けてください!」


 モンスターに襲われている女性がいた。

 一瞬だけ動画に映ったが、直ぐにカメラを切り替えて撮影しないようにした。

 人間の女性に子供を生ませるために、殺さずに襲っていたのだ、映せる訳がない。


「クソが、死ね!」


 信徒の1人がモンスターに襲われている女性を助けに急降下した。

 空を飛べない弱小モンスターでも、何の武器も持たない女性に勝ち目はない。

 半島のあちらこちらに、生き地獄に落とされる女性が数多くいた。


「いやあああああ、たすけてぇ!」


 マンションの防魔室にに入り込んだモンスターが女性を襲っている。

 それに気が付いた鳥や虫の信使が急ぎ駆けつけて助ける。

 国の高官や将軍が使う防魔地下基地は丈夫だが、民間の防魔室は脆い。


 出産可能な女性以外は、モンスターに殺され食べられる。

 神使たちもモンスターを食べているので非難できないが、最初に食べたのはモンスターの方で、神使たちは地球を守るための苦渋の決断をしたのだ。


「克徳から日本政府へ、半島最大のゲートは塞いだが、まだ北の方からモンスターが現れる、他にもゲートがあると思われるので探してくる」

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