第13話:陸上自衛隊再び

「権使徒班は防御陣を抜けてくるモンスターを皆殺しにしろ。

 神使たちも協力して、民間人を1人も殺させるな!」


「「「「「はい!」」」」」


 克徳たちはこれからの事を考えて異世界侵攻部隊の呼称を変えた。

 邪神たちが押し付けた階級を使うのは業腹だったが、実際使い勝手が良かった。


 ゴブリンやコボルトを素手で斃せる信徒を平信徒とした。

 同じようにゴブリンやコボルトを斃せる神使を平神使とした。


 だからこれまで3班と呼んでいた異世界侵攻部隊が平使徒班になる。

 これまで2班と呼んでいた異世界侵攻部隊を大使徒班とした。

 これまで1班と呼んでいた異世界侵攻部隊を権使徒班とした。


 小さいトビウオのようなモンスターたちは、戦闘能力のない民間人を殺せる。

 民間人には脅威だが、平神使たちでも簡単に勝てる程度でしかない。

 

 その分トビウオのような小さなモンスターは数が多いが、克徳と一緒にやってきた虫系と鳥系の平神使たちも数が多い。


 しかも神仏が次々と新たな平神使たちを任命して行く。

 更に平神使たちは斃したモンスターを食べて強くなっていく。

 このまま順調に斃して行けるかと思われた時に、馬鹿が現れた。


「私は佐藤1等陸佐だ、冒険者の割にはよく手伝った、ほめてやる。

 私たちが陸自が斃した、クラーケンの解体を手伝わせてやる」


 村中1等陸尉の事があって間もないというのに、愚かな事を言う馬鹿が現れた。

 イージス艦より巨大なクラーケンは、モンスターを食べることに抵抗のない者たちからすれば、膨大な量の食料になる。


 いや、魔力を身体に取り込みたい者たちからすれば、宝石よりも貴重だ。

 陸自が、いや、佐藤1等陸佐が着服できれば巨万の富になる。

 だから克徳たち向かって銃口を向けさせているのだろう。


 巨万の富に目が眩んだとはいえ、愚かすぎて話にもならない。

 クラーケンを一刀両断できる克徳がどれだけ強いのか分かっていない。

 陸上自衛隊の権力を使えば、民間人など言い成りにできると思っているのだ。


 モンスターに瀬戸大橋や明石大橋、道路や鉄道が破壊されて孤立した高知県の指揮を任されているからだろうが、思い上がり過ぎだ。

 村中1等陸尉事件から何も学んでいない大馬鹿者だ。


 克徳たちが何の準備もせずに、信用できない自衛隊を助ける訳がないのだ。

 何かあった時の為に、動画で全てを記録しているのだ。


「馬鹿も休み休み言ってもらおう、クラーケンは俺がこの手で斃した。

 お前たち腐れ陸自の砲弾は、クラーケンに傷1つ付けられなかった。

 そんなにクラーケンを横領して私腹を肥やしたいのか?

 お前1人が腐っているのか、それとも第50普通科連隊全員が腐ってるのか?」


「殺せ、殺してしまえ、流れ弾に当たった事にすれば済む」


 殺人命令まで動画撮影されたが、実行はされなかった。

 性根の腐った佐藤1等陸佐の部下が一斉に死んだからだ。

 トビウオモンスターが無数に突っ込んできて、身体中に突き刺さったのだ。


 ただ残念な事に、佐藤1等陸佐だけは生き延びた。

 自衛官たちを殺すために、神使たちがわざとトビウオモンスターを通過させたのだが、佐藤1等陸佐は克徳と正対していたので、モンスターが避けて通ったのだ。


 ドッカーン!


 海岸線近くでモンスターを迎撃した水上警察の警備艇が跳ね飛ばされた。

 そうだ、海中からの一撃で真っ二つにされて飛ばされたのだ。


「ひぃいいいい、ふせげ、お前たちが防げ!」


 佐藤1等陸佐の逃げっぷりは、とても自衛官とは思えない憶病だった。

 海中から近づいて海岸線に現れたクラーケンに恐怖して逃げ出すなんて、自衛官として恥べき行為で、自衛官失格としか言いようがない。


「今の佐藤1等陸佐の言動は脅迫と強盗未遂、殺人未遂としか言いようがない。

 村中1等陸尉の事件があったというのに、自衛隊は全く変わっていません。

 俺は陸上自衛隊を解隊するしかないと思いますが、皆さんはどう思いますか?」


 克徳は佐藤1等陸佐の言動を全て動画サイトに投稿した。

 撮影投稿するのは自衛隊の悪事だけでなく、克徳がモンスターを斃す場面もだ。


 動画を撮影するのは手先の器用な大神使で、克徳はまたクラーケンを瞬殺した。

 すると佐藤1等陸佐が連隊本部付隊を率いて戻って来た、本当に恥知らずだ。


「国難時に私利私欲でモンスターを盗もうとする国賊を許すな、拘束しろ。

 抵抗するなら射殺しろ!」


 佐藤1等陸佐は、先ほどの恥ずべき言動を隠蔽したいのだろう。

 クラーケンが襲って来た混乱を利用して、人知れず克徳を殺す気なのだ。

 だが、その全ての言動を全動画サイトでライブ配信されているのを知らない。


 モンスターを迎撃している非常時だから、命懸けで戦う前線の自衛官は誰1人観ていないし、陸海空の自衛隊幕僚本部も動画を観ていない。


 だが、村中1等陸尉事件後の陸海空自衛隊監察部は別だった。

 克徳たちがまた摘発動画を投稿しないか常時監視していた。

 だから慌てて統合幕僚本部と陸上幕僚本部に佐藤1等陸佐の愚行を連絡した。


 防衛大臣と統合幕僚長と陸上幕僚長が佐藤1等陸佐を解任しようとした。

 だが、佐藤1等陸佐は私利私欲のために臨時連隊本部から離れている。

 しかも既に全ての愚行が世界中に配信されていて、何をやっても手遅れだ。


 それに、そんな態度を神使たちが許すはずがない。

 意識的に防衛線に穴をあけ、トビウオモンスターを通過させる。

 第50普通科連隊本部付隊の全員が、無数のモンスターに突き刺されて即死した。


「ひぃいいいい!」


 ドッカーン!


 そして三度クラーケンが現れた。

 海上保安庁のあそぎり型巡視艇が真っ二つにされて撃沈した。

 その爆音とクラーケンの出現に恐怖したのだろう。


「ふひゃああああ、ふせげ、お前たちが防げ!」


 佐藤1等陸佐がまた逃げ出した。

 ついさっきまで殺そうとしていた、克徳たちに防げと言って逃げ出した。

 その全てが世界中の動画サイトにライブ配信され、際限なく拡散されていく。


 世界中にライブ配信しながら、克徳が三度クラーケンを一刀両断する。

 そこら中に転がる、斃した中小の海上海中モンスターを神使たちが食べる。

 流石にクラーケンには手をつけないが、魔力を得るために積極的に食べる。


「おい、全員私について来い、この非常時に国防の邪魔をする犯罪者がいる」


 前線に進出した臨時連隊本部に戻った佐藤1等陸佐が言う。

 私利私欲で連隊本部付を壊滅させたくせに、平気で言う


「佐藤1等陸佐、貴男は既に連隊長を解任されています、指揮権はありません。

 貴男には内閣総理大臣直々の逮捕命令が出ています。

 大人しく拘束されないと、射殺しても良いとの指令が来ています」


 臨時連隊本部に同行していた第三科長の3等陸佐が言う。

 第三科には自衛官の犯罪を取り締まる警務科がある。


「な、馬鹿な事を言うな!」


「馬鹿を言ったのは貴男です、佐藤1等陸佐。

 貴男の言動は世界中に配信されていたのです、もう逃れられません!」


「黙れ、逃れられないのはお前たちも同じだ、お前も、お前も、お前も!

 俺様と一緒に甘い汁を吸っていただろうが!」


「そうですね、私たちも逮捕収監されるでしょう。

 ですが、流石に死刑になるほどの悪事には手を貸していません。

 ここであなたに手を貸せば、私たちまで死刑にされる。

 いえ、私たちだけならともかく、家族まで嬲り殺しにされかねない。

 せめて子供たちが虐め殺されないように、貴男を逮捕して自首します。

 捕らえろ!」


「「「「「イエッサー!」」」」」


 第50普通科連隊臨時本部内での無様な逮捕劇も、世界中に生配信された。

 臨時本部内に入り込んだ小型の虫や動物の神使たちが、ライブ配信していた。


 連隊長が最後まで罵倒を止めず、一緒に悪事を働いた幹部自衛官や兵下士官自衛官の名前も、それを黙認した将官や同期の名前も世界中のライブ配信された。


 食料などの、国民の命に直結する配給品を横領した、与党の防衛省政務官や高知県の市町村長の名前もライブ配信された。


 陸海空の自衛隊は克徳の動画配信を止めたかったが、権力で止めると更に悪事が露見するので、前線の隊員に佐藤1等陸佐を止めさせるしかなかった。


 だが、命懸けで民間人を守って戦っている将兵にそんな余裕などない。

 やれるのは後方にいる佐藤1等陸佐に近い連中しかいない。

 しかし克徳の実力を動画で確認した者たちは、命が惜しくて命令を拒否した。


 克徳は腐った第50普通科連隊自衛官の悪行をライブ配信で予言した。

 第50普通科連隊の幹部自衛官が、自分たちが殺人未遂に加担していた証言をさせないために、佐藤1等陸佐を殺すかもしれないとライブ配信した。


 そしてその通り、副連隊長の二等陸佐と最先任上級曹長の准尉が、佐藤1等陸佐を殺す動画がライブ配信された。

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