第2話:成長

「俺はもう少し奥に行く、何かあったら彩葉を連れて逃げてくれ」


 克徳はかなり強い神使たちに厳しく命じる。

 強化成長した神使たちは、異世界のモンスターとは違った進化をしている。

 元々神から授かっていた神通力に魔力を融合させて、異形に進化している。


『『『『『任せろ!』』』』』


 普通のトラではなく、翼を得たサーベルタイガーに進化した神使が答える。

 翼を得ただけでなく、鬣が鉄のように強化されたライオン神使が答える。

 鉄板でも突き破れそうな角が額から生えている、翼のあるオオカミ神使も答える。


 他にも数えきれないほどいる神使たちが、一斉に強く答えてくれる。

 神使たちの滲み出る自信を感じられた克徳は、安心してゲートから離れる。

 強い魔力を感じる方角に向かって駆ける。


 ゲート近くに残った高井彩葉は、日本の神仏に祈りを捧げながら、身動きの取れなくなったモンスターに止めを刺し続ける。

 克徳が無力化したモンスターに止めを刺し続ける。


 日本の神仏から神使の選ばれた動物たちが、捧げられたモンスターを食べる。

 普通の動物と変わらない神使たちが、強くなろうと必死で食べる。


 食べ切れないほど多く狩ったモンスターを無駄にしない。

 ゲートを通り抜けられるギリギリの神使たちが地球側に運ぶ。

 ゲートを通り抜けられない守護神使たちが食べて、更に強大に成る。


『そろそろですね』


 克徳の直ぐ右横を駆けるペガサスが心の声で話しかける。

 見た目はアニメやラノベでよく見るペガサスに強化成長進化しているが、元は普通のサラブレッドだ。


 神々が地上に介入するようになって、経済動物から神馬に成れた子だ。

 克徳と共にダンジョンやゲートに挑むようになり、メキメキ強くなっている。


 ただ、肉食や雑食の神使ほどは強くなれない。

 何故なら、元が草食なのでモンスターを食べて魔力を取り込めないからだ。

 無理をすればモンスターを食べる事はできるが、それでも極少しだ。


 それよりは、異世界に入って草木を食べた方が強くなれる。

 普通の草食神使では、危険極まりない異世界には入れない。

 神馬に成ったばかりでは、並のオークにすら勝てず、喰われてしまう。


 だが、克徳が主だったモンスターを斃した後の異世界なら、安心して入れる。

 短期間に強化成長進化した肉食の神使たちが周りを固めてくれていれば、草食の神使たちも安心して異世界の草木を食べて強くなれる。


「「「「「ギャアアアアオ!」」」」」


 ミミズを巨大化させたようなワームが、群れを成して襲って来た。

 海を泳ぐ巨大なリュウグウノツカイのように、地中をうねり進む。

 その強大さは、大木と言っていい木々が根から弾け飛ばされるのでわかる。


「神仏に捧げてくれる、死ね」


 言い放った克徳が身体中に神通力を回して自身を強化する。

 神々から授かった神通力を7つのチャクラに回してとんでもない力を引きだす。


 神々から授かった神通力を天叢雲剣に込めてワームに叩きつける。

 神通力で見通したワームの急所を的確に貫く。


 克徳は地球史上最大の蛇ティタノボア、全長12・8メートル、体重1135キログラムを超える強大なワーム数十匹を瞬殺した。


 圧倒的な強さでワームを斃した克徳だが、神使たちのように食べたりしない。

 ダンジョンに挑む人々の中にはモンスターを食べる者もいるが、克徳は食べない。


 モンスターを食べる人間の中には、嫌々食べている人もいる。

 神仏の中には、信徒にモンスターを食べて強くなるように命じる神もいるのだ。


 特に一神教の神は、信徒にモンスターを食べさせて成長強化させる。

 人間と言えない異形に変じさせ、天使や予言者と呼んで軍団を編成する神もいた。


 だが日本の神仏は、信徒や講仲間にモンスターを食べるように強制しない。

 神道や仏教の中には菜食を戒律にしている宗派もあるからだ。

 何より、人を異形の存在に変化させる事を日本の神仏は嫌っていた。


 嫌ってはいたが、日本人全体に食べないように強制もしていない。

 だから、モンスターを喰らって魔力を得る日本人もいた。

 ただそんな日本人の多くは、日本の神仏から神通力を得られない。


 食料がないなどの、どうしようもない状態でモンスターを食べた者だけが、神仏の温情で神通力と魔力の両方を得ていた。


 日本に住む一神教の信徒たちの中には、進んでモンスターを喰らう者もいた。

 そんな者たちが日本で好き勝手に振舞わないように、神仏は警戒していた。

 自分以外に神はいないという連中を、異世界の神同様に危険視していた。


 だから克徳はモンスターを食べないようにしていた。

 魔力が欲しくて食べたい気持ちもあったが、食欲がわかなかった。


 人型のゴブリンやコボルト、オークなどはとても食べる気になれなかった。

 巨大なミミズにしか見えないワームも食べる気になれなかった。

 ミミズが漢方薬に使われていると知っていても、食べる気になれなかった。


 動物の姿に近くても、バジリスクやキマイラ、コカトリスやブラッグドックは食べる気に成れず、肉食動物系の神使たちに譲っていた。


「運ぶぞ、手伝ってくれ」


『『『『『任せろ!』』』』』


 神使たちが克徳に譲られたモンスターの遺骸を運ぶ。

 全長はワームほどではないが、1000キロを超えるトラやオオカミ、ライオンやイヌの神使たちが声を揃えて答え、運んでくれる。


 神使1体が死んだワーム1匹を咬んで運ぶ。

 これ以上モンスターを食べてしまったらゲートを通れなくなるので、もっと弱い神使たちに分け与えるか、ゲートを越えてから食べるために運ぶ。


「克徳さん、申し訳ありません、まだ全部止めを刺せていません」


 克徳が神使たちとゲート前に戻ると、高井彩葉が即座に謝る。

 克徳がワームの群れを斃す時間では、1000を超えるモンスター全てに止めを刺す事ができなかったのだ。


「気にしなくて良いよ、神仏は人に無理難題を押し付けられたりしない。

 自分の実力に合った役目を果たせばいい、休みながらやってくれ。

 俺はもう1度モンスターを狩って来る、後は任せたぞ」


『『『『『任せろ!』』』』』


 現場にいる神使たちが声を揃えて答える。

 強化成長進化した神使たちが、自信満々に答える。


 高井彩葉が再び神々に祈りを捧げながら止めを刺し続ける。

 そこに神使に成ったばかりの弱い者たちが、ゲートから続々と現れる。


 神使たちが、食糧難で見境の無くなった人間に食べられてはならないのだ。

 モンスターを斃す神使がいなくなるだけでなく、神々に逆らった人間が天罰を下されないように、神使は人間に狩られないくらい強くならないといけない。


 一方克徳は言葉通りゲートから離れて行った。

 成長強化しただけでなく、数まで増えた神使の一部を率いてゲートから離れた。

 モンスターの大軍団が近づいていたからだ。


 一方的に異世界から地球に攻め込むはずだったモンスターたち。

 だが日本の神仏の機転によってダンジョンが創りだされた。

 異世界の神が目論んでいた当初の状態とは真逆になっていた。


 日本の神々は、守護神使たちにゲートを守らせつつ、好きな時に異世界に攻め込める状況を創り出したのだ。


 克徳のような人間離れした信徒が、何時異世界に攻め込んで来るか分からない。

 異世界の神は、逆襲に備えてモンスターを守りに配さなければいけなくなった。

 

 ゲートの前には1000のモンスターが見張りに配されていた。

 少し離れた場所には強大なワームが遊軍として配されていた。

 更に奇襲を受けない離れた場所に、1万を越える大軍団が駐屯していた。


「皆殺しにせよ!」


 ジェネラルオークに率いられたモンスター大軍団が押し寄せて来た。

 ファイターオークやファイターコボルトなどの、近接戦闘が得意なモンスターが剣や槍を手に戦いを挑んで来た。


 だが、7つのチャクラを開放した克徳の戦闘力にはかなわない。

 圧倒的な素早さでモンスターの攻撃を躱し、的確な一撃で即死させる。

 首を刎ね心臓を貫いてモンスターたちを即死させていく。


 今回は克徳だけでなく、付き従った神使たちもモンスターたち斃していく。

 それぞれの実力に応じて、確実に斃せるモンスターだけを相手にする。

 ゲート通過に問題のない神使たちが、その場でモンスターを食べている。


「地球人ごときに殺される我ではない!」


 ジェネラルオークは、全身が鋼のような剛毛に覆われ守られている。

 強靭な筋肉で圧倒的な力を発揮し、1トンを超える金棒を振り回す。

 全身を隠せるくらい大きく重く硬い盾で身を守って突っ込んできた。


 ワームすら一撃で叩き殺す金棒で克徳の頭を叩き潰そうとした。

 だが、克徳は蝶のようにひらりと躱してジェネラルオークの首を刎ねた。

 

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