第5話 職場でのこと
職場でのこと。
デザイナーチームにいるカナダ人男性が、彼にとってひとまわり歳下にあたる女性からひどく叱責されていた。座席が遠いので詳しいことはわからないが、「ズレている」「デザイン案通りでない」との声が聞こえた。そのカナダ人男性は陽気でフランク、悪くいえば杜撰な性格というのもあるかもしれない。また彼は日本語が達者ではなく、女性の方が早口の日本語で指示を出していることも、この場では悪い方へと働いているように見えた。指示が曖昧だとか、it's sameだとか、押し問答が続くうちに女性の口調が厳しくなった。はたから聞いていても辛くなる口調だった。最終的に修正する箇所を全て指示しますと彼女は言いやりとりを打ち切った。
その日、エレベーターでカナダ人男性と立ち話をしたばかりの住田はどうにも彼が不憫でならず、ひとことslackのダイレクトメッセージで声をかけた。
こんなとき先生ならどうしただろう。飼い慣らす以前に、ひとが無能かどうか住田には分からないのだ。遠く消防車のサイレンが鳴った。職場の気まずい雰囲気が緩和された気がした。
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