第11話 エデルは真面目
(41)11.1 海賊を捕縛
船に揺られて二日目。
エデルを乗せていた船は、何者かに襲撃された。
(敵は誰だ!?)
部屋の小さな窓から覗くと、頭に布を巻いている十数人の男達が見えた。
「敵襲! 敵襲! 総員、海賊を撃退せよ!!」
船を襲ったのは海賊らしい。エデルがいる部屋まで号令が届く。
エデルは罪人であり、自由に動いてはいけない。しかし、一人だけ部屋で待機しているのも気が引ける。
どうしたものかと考えていたとき、剣が飛んできた。壁に刺さった剣はすぐに抜かれ、窓越しではなく様子を窺えるようになる。
(視界は狭いが、問題ない)
エデルは窓から見える光景と併せて、小さな隙間から外へ向けて詠唱する。
「世界に満ちる土の精よ、我に力を与えよ!
隙間から漏れ出たエデルの詠唱が、甲板で効果を発揮する。頭に布を巻いた男達を全て縛り上げた。現場は混乱しているように見える。しかしすぐに勝利したことを実感し、雄叫びを上げた。
海賊との戦闘が終わり一安心していると、エデルがいる部屋の扉が叩かれる。エデルが返事をすると、一人の兵士が部屋に入ってきた。その後ろには、エデルをジュムニ島へ運ぶために乗員していた兵士らが全員いる。
先頭の兵士が頭を下げると、後ろの兵士らも頭を下げた。
「迅速なる解決に助力いただき、感謝します」
「「「感謝します!」」」
兵士曰く。ジュムニ島が未開の地というのは、昔から海賊がいるとされ、簡単には手を出せないからなのだそう。ここは国境でもあり、他国から海賊を排除するように言われていたようだ。エデルをジュムニ島へ運ぶための要員ではなく、機会があれば海賊を捕らえるための大所帯だったらしい。
先頭の兵士がエデルの縄を解く。
「我々は貴殿に救われました。あなたは、救世主です」
「あの海賊達は、国へ運ばれるのか」
「はい。救世主を罪人として扱うのは苦渋の決断ですが……貴殿をジュムニ島へ運ばなければいけないため、その後海賊達を本土へ運びます」
「それなら、小舟か何かないだろうか。それがあれば、ジュムニ島まではわたし一人が行けば良いだろう」
「なんと……貴殿は本当に、罪人でしょうか。自ら島へ渡るとは」
「わたしから提案しておいてどうかと思うが、わたしは愛し子の心を壊した罪人だぞ? 信用して良いのか」
「良いも何も、貴殿は我々を救ってくれた方ですから。本当は、このまま共に本土へ帰っていただきたいくらいです」
「それでは、あなた達が罰せられてしまうだろう」
「一兵士のことを気にかけてくれるとは、何とお心が深い」
兵士全員がエデルににもう一度頭を下げると、救助に使われるという小舟まで案内された。海面に下ろされ、縄ばしごを下りる。
この小舟は魔法が動力源のようで、船尾に着いている箱に魔法を当てれば良いらしい。
「世界に満ちる風の精よ、我に力を与えよ!
エデルの魔法で動き出した小舟を、兵士ら全員が見送った。
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