片思い中の俺の前に、小さな天使が現れた⁉

青井 結成

プロローグ①

「別にさ、モテたいって言ってるんじゃなくて、たった一人、好きな人から好かれたいだけなんだよ? それくらいさ、神様がかなえてくれてもいいじゃんよ……!」


桜の花びらが舞う4月のとある日。

空は夕焼け色に染まり、道に沿って並んでいる家には電気の明かりがともってくる時間帯、静かになりつつある住宅街にそんな声が響く。


「うんうん、気持ちはすっごくわかるよ。でもさ、もうちょっと声のボリューム落とそうか、幸希こうき


そんな悲痛な叫びを軽くあしらうこのすこ~し落ち着いてて余裕があって、多少顔がいいってだけでモテている幼馴染の大輝だいきだ。

小さい頃からずっと一緒で得意なことや苦手なこともよ~く似ている俺たちなのに、なぜか、異性……いや、同性もか……。

周りの人からの人気には大きな違いがあるのだ。

やってることはほぼ同じだし、できることもほぼ同じなのに……。

違うのは性格と顔。

いや、まあそう考えるとかなり違うか……。

なんかちょっといろいろとショックすぎて大輝に当たろうとしてたけど、よくよく考えたら性格と顔違うって人間関係においてはかなり大きな要素だよね、これ……。

だってさ、恋愛において顔と性格、どっちが重要?とか言うに炊くあるじゃん?

あれにおける二つの選択肢が違うってことでしょ?

いや、まあそりゃ人気に差が出るか……。

って、そんな話じゃなくて


「うるさくしちゃったのはごめんじゃん……。でも、ちょっと今日も、いつもの恋愛相談乗ってほしいかも」


そう、今日もこの人気者の幼馴染の大輝くんに、恋愛のアドバイスをもらいたかったのだ。

せっかく近くにこんなモテる幼馴染がいるんだから、アドバイスをもらうなり、有効活用しないともったいないというか、ね? うまく説明できないけどわかるでしょ?


「はいはい。別に俺も恋愛経験豊富ってわけじゃないけど、今日はどうしたの?」


かなりテンションが低そうな感じで、大輝がそう返す。

本人も言っているように、こんなにモテモテの大輝くん、実は恋愛経験については俺と同じくらい……というか多分、俺よりないのだ。

彼女がいたことがないどころか、好きな人がいたという話すら聞いたこともない。

不思議だが、その気持ちも少しわからないわけではない。

冒頭に言ったように、俺は『モテたい』わけではなく『好きな人に好きになってほしい』だけなのだ。

だから、大輝がモテるからと言って彼女がいないことに関してはなにも不思議ではないのだ。

まあ、好きな人がいるということすら聞いたことがないのは大変不思議なことなのだが……、


「じゃあそしたら今日は……」


こうして今日も、俺たち二人は恋バナをしながら帰るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

片思い中の俺の前に、小さな天使が現れた⁉ 青井 結成 @aoi_0305

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ