未定

れおんがくしゃ

プロローグ

「伏せろぉぉぉっ!!」


爆風が蓮の身体を吹き飛ばした。


鋭い耳鳴りとともに、世界がスローモーションのように感じられる。

崩れたコンクリートの破片が宙を舞い、砂煙が視界を奪う。

身体を地面に叩きつけられ、肺から酸素が絞り出されたような息苦しさが襲う。


「っ……ぐぅ……」


耳鳴りの向こうで、銃声と悲鳴が響いている。


戦場だった。


東京の中心地。つい数時間前まで、人々が普通に生活していたはずのこの街が、今では炎と血の海と化していた。


「三上! 無事か!?」


砂煙の中から、藤堂の怒鳴る声が聞こえた。


蓮は咳き込みながら上半身を起こし、視線を上げた。


そして、目に飛び込んできたのは――


光学迷彩をまとったAI戦闘ドローンが、倒れた自衛隊員の身体に向けて無慈悲に銃口を向ける姿だった。


「待てぇぇぇっ!!」


誰かの叫びと同時に、銃声。


しかし、ドローンは弾丸を容易く回避し、静かにターゲットの頭部に銃口を突きつける。


「やめろ……!」


蓮が息を呑んだ瞬間――


発砲音とともに、仲間の身体が痙攣し、動かなくなった。


一瞬で命を奪ったAIは、何事もなかったかのように次のターゲットを探し始める。


蓮の指が震えた。


「なんだよ……これ……」


まるで“処理”しているだけのような、機械的な殺し方だった。

感情の一欠片もない。冷酷なまでに計算され尽くした動き。


蓮は、恐怖で思考が凍りつくのを感じた。


「これは……戦争なんかじゃねえ……」


「蓮!!」


藤堂の怒鳴り声が聞こえた。


「ボサッとしてると殺されるぞ!! 逃げるぞ!!」


「で、でも……っ!」


「考えてる暇はねえ!!」


藤堂は蓮の腕を掴み、力任せに引っ張った。


その瞬間――


上空から、新たなドローンの影が迫る。


鋭い機械音とともに、レーザー照準が蓮の額にロックされた。


死が迫っていた。



ターミネーターを観ていた際にふと思いついた物語になります。

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未定 れおんがくしゃ @leo_086

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