エイラがペンダントの光を追い、雨の森を後にして向かった先は「風の谷」だった。この谷はアヴィアでも特に風が激しい場所で、空を飛ぶ鳥人間たちにとっても危険な地域として知られている。強風が作り出す渦が空中に乱舞し、不用意に飛ぶと命を落としかねないと言われていた。だが、ペンダントが示す光は確かにその谷の中心部を指している。

エイラは風の流れを読み、慎重に進むことを決めた。谷に近づくと、風の音が耳をつんざくように響き、木々や岩がその力に抗えず揺れている。

谷の入り口に立つと、エイラは奇妙な光景を目にした。風の中を優雅に舞い、渦を自在に操る鳥人間たちがいた。彼らは「ウィンドシーカー」と呼ばれる一族で、風の力を極限まで引き出す技術を持っていた。

エイラが風の中を進もうとすると、ウィンドシーカーの一人である若い女性が近づいてきた。彼女はエイラをじっと見つめ、「この谷に何の目的で来たのか」と問いただした。

エイラがペンダントを見せて自分の旅の目的を語ると、その女性は目を見開いた。

「そのペンダントはこの谷に隠された秘密と深い関係があるものだ。もし真実を知りたいなら、賢者の元を訪れるべきだろう」

ウィンドシーカーたちの案内で、エイラは谷の奥に住む賢者「セリオス」と会うことになった。セリオスは長い白髪を風に揺らし、静かに座していたが、エイラを見るとすぐに目を細めた。

「お前のような若者が、この谷にたどり着くとは珍しいことだ。だが、お前の持つペンダントには重い意味がある。それが導く先は、ただの希望ではないかもしれない」

エイラはその言葉に戸惑いながらも、ペンダントの光が次に示す道について尋ねた。セリオスは答える代わりに、エイラに試練を課した。

「風を恐れず、風を受け入れよ。この谷が試すのは、お前の心の強さだ」

エイラはセリオスに従い、谷の最も風が強い場所へと向かう。そこは巨大な岩場で、風が渦巻いて空中を乱していた。エイラは羽ばたきながら風を読み、その中を進む術を学んでいった。

風に押し戻されそうになるたびに、彼女は心の中で自分に問いかけた。「この旅を続ける意味は何だろう？」

その答えは、亡き両親や自分の種族の未来のためという強い思いだった。彼女は風の中心までたどり着き、渦の中にある古代の石板を見つけた。

石板には古代文字が刻まれており、エイラがペンダントをかざすと文字が輝き始めた。そこに浮かび上がったのは、アヴィアンたちの起源に関する断片的な情報だった。

「星が地に降り、風がそれを運ぶ。命の翼はその光と共に広がる…」

その言葉を読み終わったエイラは、セリオスの元へ戻った。セリオスは深い目で彼女を見つめながら言った。

「その石板が語るのは、アヴィアンたちがどのようにしてこの大地に根付いたかという秘密の一端だ。そして、その星の力を巡り争いが起こる可能性も秘めている。お前の旅の先には、真実とともに大きな試練が待っているだろう」

エイラはその言葉を胸に刻み、新たな光が示す方向を目指して飛び立った。それは「海の先」だった。

ウィンドシーカーたちはエイラを見送り、谷を抜けるための風の操作術を教えてくれた。その技術を駆使し、エイラは危険な風の谷を抜けることができた。

セリオスの予言の言葉が胸に響く中、エイラは次なる目的地を目指して飛び続ける。だが、彼女の背後には、彼女を密かに監視している存在がいることに気づいていなかった。