Aviara(アヴィアラ)
@Ilysiasnorm
第1話 青の世界
第1話
アヴィア大陸――そこは、空がどこまでも広がり、地上には大草原と澄んだ湖、そして山脈が連なる楽園のような世界だ。空を見上げれば、鮮やかな羽を持つアヴィアン (Avian)たちが悠然と舞い、翼を大きく広げて風を感じながら生きている。彼らは空を主な生活の場としており、地上にも適応できるが、大空こそが彼らの本当の故郷だった。
アヴィアのある村、オルニスの朝。太陽が地平線を照らし、村全体が黄金色に染まる。エイラは目を覚まし、空気の冷たさと陽光の暖かさを感じながら自分の羽を軽く広げた。彼女の羽は深い青色で、空の色に溶け込むような美しさを持っている。
「今日もいい天気だな」
エイラは窓を開け放ち、羽を羽ばたかせて体を目覚めさせる。村の中央広場では、若い鳥人間たちが訓練を行っているのが見えた。彼らはそれぞれの羽を広げ、空中での機敏な動きを競い合っている。
エイラは空へと飛び立つと、爽やかな風が顔を撫でる。彼女は飛びながら、自由に空を舞う喜びを感じていた。アヴィアの空は、風の流れが場所ごとに異なり、鳥人間たちはそれを利用して移動や飛行の技術を磨いている。エイラは村で最も優れた飛行技術を持つ一人で、仲間からの信頼も厚かった。
空を飛ぶ最中、彼女は村の長老タレンの元を訪れることを思いつく。タレンは村の歴史や伝承を語ることに長けた知識人であり、エイラが幼いころからよく話を聞きに行っていた。
長老の家は、村の高台に位置する。そこは地上よりも風が強く、羽の使い方を間違えれば簡単に足を踏み外しそうな場所だ。エイラは軽やかにその家へ降り立ち、扉をノックする。
「入っておいで、エイラ」
低く落ち着いた声が扉の向こうから聞こえる。
家の中に入ると、タレンは古びた巻物を手にしていた。その周囲には、鳥人間たちの歴史や文化について記された本や遺物が所狭しと並べられている。
「また何か聞きたいことがあるのだろう?」
タレンは微笑みながら、彼女を見つめた。エイラは頷き、「アヴィアン がなぜ空を飛べるようになったのか。その秘密を知りたいんです」と答えた。
タレンはしばらく沈黙し、巻物を閉じて椅子に座り直した。
「それは古い問いだ、エイラ。アヴィアンたちは空を飛ぶことで自然と共存し、繁栄してきた。だが、その力の起源については誰も確かなことを知らない」
「じゃあ、伝説とかでもいいです。何か手がかりになるものはありませんか?」
タレンは窓の外を見つめながら話を続けた。
「一つの伝承がある。それは『星の遺跡』にまつわるものだ。その遺跡はアヴィアンたちの起源に関する何かを隠していると言われているが、その場所を知る者はいない」
エイラの心がざわついた。「星の遺跡……?それはどこにあるんですか?」
タレンは肩をすくめ、穏やかな声で言った。
「それはお前自身が見つけ出すべきものだ、エイラ。答えはいつも空のどこかにある。だが、それを見つけるのは容易ではない」
エイラはその言葉に深い意味を感じた。星の遺跡――その名前は彼女の胸の奥に強く響き、いつしか冒険心を掻き立てていた。
タレンの家を後にしたエイラは空を飛びながら考える。村の生活は快適で安全だが、自分の中に芽生えた探究心を抑えることができない。「星の遺跡」を見つけ、その謎を解き明かしたいという衝動が胸を満たしていく。
エイラは村の風景を見下ろしながら、「この空の下には、私たちの知らない世界が広がっている。私はそれを確かめたい」と決意を固める。彼女の目には、希望と不安、そして冒険への期待が入り混じっていた。
空が赤く染まり始める夕暮れ時、エイラは村の広場に降り立つ。そこでは仲間たちが火を囲みながら談笑している。その温かい光景を見て、彼女は一瞬ためらいを感じるが、「ここに留まるだけでは何も変わらない」と自分に言い聞かせる。
こうして、エイラの冒険が始まるきっかけが生まれる。
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