第6話 告白

――――放課後


今日は美紀たんに呼び出されて、図書室にいてる。

「しずくは、好きな人いないの?」

「な、なんで?」

「しずく、お父さんが大変で...心の支えになるような彼氏がいたら、いいと思うのよ。」

美紀たんは、真剣な顔で言ってきた。

本当に私のこと心配してくれてるのがわかった。

私のお父さんは1年前に脳血栓で倒れて、今は半身不随で寝たきり...言葉もうまくしゃべれなかった。

そのことを交換ノートで、(美紀たんは、私の親友でふたりで交換ノートしてるんだ。)よく、 嘆いてたからな...。

「私も協力するから。」

「好きな人とかいないの?」

「中山君のこと好きじゃないの?」

美紀たん!勘がするどい!

でも、なんか、彼女持ちのいじめっ子(中山君のこと)、好きだなんて言えなかった。

「誰が、あんな意地悪な人好きなわけないよ。」

「じゃ、誰?」

え~~~~~い!ままよ!!!!

「笹野君。」

私は、適当に、好きになっても恥ずかしくない相手として笹野君を選んだ。

「え~~~~~~。そうなんだ。」

「笹野君、顔もいいし声もいいし、優しいよね。」

「しずく、声フェチだしね(笑)」

「よし!告白しよ!」

「ちょっと、なんでそうなるのよ。」

私は、嘘をついてる手前困った。

「大丈夫だよ。しずく、あのグループのみんなに好かれてるやん^^」

「笹野君、彼女いないみたいだし、大丈夫だよ。」

美紀たん、その訳の分かんない自信は何処から来るのーー;


しばらくは断り続けたけど、美紀たんの熱心さに負けて告白することになった。

生まれて初めての告白。

好きじゃない人にする...


「大丈夫?心の準備はいい?」

美紀たんがしんぱいしてくれた。

その日は土曜日で、笹野君たちは、廊下に集まってすぐに帰っていきそうだった。

廊下で呼び出せなかった。

帰り道で捕まえようってことになって、笹野君たちを追いかけた。


学校の帰り道、マクドの前の歩道橋ーーーー

中山君たちと帰ってる笹野君を美紀たんが呼び出してくれた。


中山君たちは、私が呼びとめてもらったのが笹野君だったことに驚きながらも、ひやかしてきた。


みんなが...中山君が遠目で見守る中、私は生まれて初めて告白をした。

「好きです。」

その一言...

返ってきた返事は

「ごめん...」

だった。

私は内心、ホッとした。

「いい友達でいよう。」

私は、なんか漫画のセリフを無意識に言っていた。

「いい女になって、フッたことを後悔さしてみせる。」

笹野君は、優しく微笑んでくれた。


私の心のない告白はおわった。

お仕事がおわったような感覚だった。

悲しみはない。あるはずがない。


学校に戻ると麻美たちが待っていた。

「どうだった?」

私は両手で胸のあたりに×ってした。


それを見て、麻美が私にこっそり言う。

「しずく、あんまり悲しい顔しないでね。告白すすめた美紀たんがつらい思いするから。」

いや...、悲しくはないんですけど。

私の失恋の心配より、告白すすめた美紀たんの心配ですか?

なんか、もう、どうでもよかった。


――――告白の次の日の放課後


「島田の奥さ~~~ん!」

中山君が変わりなく私をそう呼ぶ。

私もかわらず、中山君のところへ行って文句を言う。

「だから!私は島田君の奥さんじゃないって言ってるでしょ!」

「じゃ、笹野の奥さん?」

私はその言葉に驚きと腹立たしさを感じた。

笹野君もびっくりしていた。

私は思わず、中山君のほっぺたを叩いた。

「いてぇな。」

「私は笹野君の奥さんにはなりそこったんですけど!」


「ははは、思ったりより、元気そうじゃないか。」

中山君、やさしいのか、意地悪なのかわからなかったけど、

でも、これからも、中山君たちのところに行く勇気は、もらった気がした。

笹野君も

「中山と星野さんのやりとり見てるの楽しいから、これからもこっちこいよな。」

って言ってくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る