初恋

夢僮亜樹

第1話 娘の卒業式

3月14日 早咲きの桜が満開だった。

今日は娘の千夏の中学校の卒業式だ。


私は、川崎しずく。38歳。

私も24年前、この中学校を卒業した。


「ママ~!萌香ちゃんたちと、プリクラ撮ってから帰るから、先に帰ってて。」

「はいはい。あんまり遅くならないようにね。」


娘を見送って、帰ろうとしたら、後ろから、誰かに呼ばれた。


「星野?」


星野は、私の旧姓だ。


ふり返ると、見覚えのある顔がそこにあった。


「中山君?」


その人はコクリとうなづいた。


少し老けたけど(ごめん)相変わらずかっこいい♡


中山君は、私が中学3年生のときにクラスメートだ。


「うわぁ♡懐かしい♡」

「中学卒業以来だから、24年ぶりかぁ。」

「私、今は川崎になったよ。」

「中山君もここにいるってことは、卒業生の子供がいるんだね。」


私は周りをきょろきょろして訊いた。

「ん?奥さんは?」

少し照れたような顔で、

「インフルエンザで、急きょ、ピンチシッターや。」

「おまえに奥さんとか言われると、変な感じやわ。」


「ところで、おまえの子供は?」

「友達とプリクラ撮りに行った。」

「いまだに、プリクラって流行ってんのかな?」


「そういう、中山君の子供は?」

「彼女と帰るんだってさ。」


「へーえへーえへーえ。」

「なんだよ?」

「男の子なんだね?子供。」


「なあ、せっかくやし、俺たちの教室行ってみないか?」

「うん♡」


――――24年前の3年5組の教室


「うわぁ、懐かしい♡」

「さすがに古びたな。」

「見てみて、まだ、あの頃の落書き残ってるよ^^」


私は中学生の頃のことを思い出していた。


「あの頃ってさ、中山君私のこと『島田の奥さん』ってからかってたよね。」


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