プロゲーマーにあこがれて
アーカーシャチャンネル
理想と現実のギャップで闇堕ちしてはいけない
令和日本、様々な職業にあふれていた。
ある職種では人手不足、またある職種ではあまりにも増えすぎた関係でバイトを削る……そんな動きもあるかもしれない。
一方で、闇バイトや違法な風俗営業などのような物には手を出すべきではないだろう。
そうしたものは職業とは言わず、そのまま犯罪者のレッテルを貼られてしまうからだ。
そうした職業は……この世界には存在しない。むしろ、過去にジャパニーズマフィアが存在したことさえも過去形だ。
ここで語られる令和日本は、おそらく我々とは違う世界線をたどった日本かもしれない。
「探しても、探しても見つからない」
とある男性配信者……むしろVTuberの中の人か。彼はSNSのタイムラインを見て、ふとしたつぶやきを発見し、それを再確認しようとしていた。
しかし、どこかに隠れてしまい、見つけられずにいる。悩んでいても始まらないのだが……探すにしても手間はかかる。
【プロゲーマーの年収を知りたい】
こういう感じの内容だったと思う。詳細な額は記載がなかったようだが、よほどの事だろう。
憶測記事であれば1000兆円とか10兆円とか書かれているものもあるのだが、どう考えてもAIの作った粗悪なフェイクか便乗インフルエンサーの記事だろう。
それだけの額が稼げていれば、税金もかなり取られるだろうし……脱税で逮捕とか言ったら大惨事なのは確実。
そこまでの額であればニュースで話題になるはずなのだ。それなのに、話題にもならず……SNSで拡散されているだけはおかしい。
しかし、実際にプロゲーマーの年収とはどれ位なのだろう? 架空の年収だけが独り歩きし、現在のような状況になっている可能性も否定できない状況だ。
そこで、彼は有名なプロゲーマーのアカウントを発見し、その内容をチェックすることにする。
「年収は、そこそこですよ。税金対策で言わないわけではない。ただ、そこまでプロゲーマーへのジョブチェンジを薦めるわけでもないですし」
そのプロゲーマーとは、個人勢のプロゲーマー集団【トリの降臨】だった。その男性ゲーマーの一人が、雑誌のインタビューでこう語っている。
自分はVTuberの配信機材などの充実のためにも資金は必要と考え、そこでプロゲーマーという職業ならば容易に稼げるのでは、と思って年収を検索していた。
しかし、そうした考えが愚かだった……むしろ、こうした発言を受けて闇堕ちなどをしないで済むようになった、と言えば気が楽だろう。
どの職業にもあこがれを抱きつつ、現実とのギャップを感じて闇堕ちをするような人物はフィクション、現実に限らず無数といる。
(結局、年収額なんてわからなかった。どうすれば……?)
自分は結局、何をしたかったのか?
やはり、世の中には楽して稼ぐというのは存在しないのだ。だからこそ、闇バイトのような犯罪に手を出してしまう人間もいる。
だからこそ……自分は、そんな現状を変えようと、ある決意をした。
【楽してお金を稼ごうとしてはいけません。軽い気持ちで闇バイトに手を出せば、それこそ人生を投げ捨てるようなものになります】
彼は結局、プロゲーマーを目指すのを止めてしまう。完全にあきらめたわけではない。
しかし、今の気持ちでプロゲーマーを目指しても……理想と現実に押しつぶされて闇堕ちするのが目に見えている。
自分と同じように楽してお金を稼ごうとしている人間に対し、闇バイトなどのような犯罪へ手を出さないように……とメッセージを残した方が良いのでは、と思った。
そして、この投稿の後、彼は日課のソシャゲをプレイしつつ……翌日には、まさかの展開になっていたのである。
「えっ!? 万バズって……おはようの投稿でも反応がなかったのに、これはどういうこと?」
彼も思わずパソコンの画面を見て、驚きを隠せずにいた。
普段から行う【おはようVTuber】のハッシュタグを付けたあいさつを投稿しようとしたのだが、その前に大量の通知を見て……思わず叫んでしまう。
自分でも経験がないような万バズ、それも何気ないような投稿が、こういったところで注目されたのだ。
(やはり、闇堕ちをしないのは……正解だったのか)
一度はネガティブなお気持ち表明系への鞍替えも考えていただけに、この状況には驚きを隠せない。
プロゲーマーの年収を調べていたはずが、いつの間にか彼はどのような投稿がバズるのか……という点にだけ執着してしまい、道を外す所だったのだ。
そして、彼は自信を取り戻し、VTuberとしての活動も続けていくことになる。
結局、この【トリの降臨】というグループは一体何者だったのか……それは定かではない。
だが、あるフィクション作品の「プロゲーマーの年収は?」というシーンがトレンド入りしたことで、唐突に【トリの降臨】がピックアップされたのだろう。
このプロゲーマーグループは後に調べてみたのだが、実在しないフィクションの小説が切り取られ、拡散したものと言うことも判明している。
だからと言って、彼はプロゲーマーに失望したりはしない。
フィクションはフィクションと区別すること、それが今回はとても重要なのだから。
プロゲーマーにあこがれて アーカーシャチャンネル @akari-novel
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