第4話 ライバル

結城とケルは、地獄級のボス戦を終えた後、再び静かな森の中に戻ってきた。周囲の風景は一変し、荒々しく炎を吹き上げるような地獄のような場所から、穏やかな緑に包まれた平和な森へと変わっていた。木々の間から差し込む柔らかな日光、鳥のさえずり、風に揺れる草の音――そのすべてが心地よい。


「ふぅ…やっと普通の場所に戻ったな。」


結城は深呼吸をしながら、周囲の自然に感謝の気持ちを抱いた。地獄級の戦闘から戻ってくると、こういった静かな場所がいかに大切か、改めて感じさせられる。ケルも落ち着いた様子で、結城の横に歩いてきた。


「お前も、さっきの戦いで疲れたか?」


結城はケルに軽く話しかけると、ケルは大きな体をゆっくりと揺すり、しっぽを少しだけ振った。どうやら、戦闘後の疲れは感じていないようだ。


「それにしても、ケル、お前、かなり強いな。あの時は正直、どうなることかと思ったけど…お前が仲間になってくれて、本当に頼もしいよ。」


ケルは唸りながらも、少し嬉しそうに見えた。結城が声をかけるたびに、彼の存在が徐々に仲間として定着していくのを感じることができる。ケルベロスという強大な敵が、今や自分の仲間になっている――その現実が不思議なほど心強く感じられた。


クエスト?とかはなかったが、森を移動していると、草むらからスライムがひょこっとでてきた。


「スライムが現れました。」


「スライムの体の真ん中にある球状の核を破壊することで討伐可能です。」


ナイフを使って一発でついた。一発で破壊できて、俺こんなに強かったっけ。力。疑問に思っていると、ゲームアシストが「ケルの能力を吸収したおかげでステータスに+で補正がかかっています」。と説明してくれた。


「レベルが2上がりました。」

「スキル『急所突き』を獲得しました。」

「レアアイテム『スライムゼリー』を獲得しました。」


ステータスポイントとか入手していると思うし、ステータス見るか。


新条結城 

レベル2

攻撃力:20(+150)

防御力:10(+200)

俊敏性:20(+300)

知能:10(+100)

運:9999(+100)


スキル

『豪運』『死神』『急所突き』

「※ +の部分は本人しかわからない」


「は?」


「俺強すぎない?」

「いや、運が高いだけで意外と弱い可能性もあるから明日考えればいいか。」



と一瞬油断した瞬間に後ろから気配がした。

「俺が背後を取られるなんて」


後ろを見ると、同じ年齢くらいの男の子が居た。


「誰だ?」


目の前に立っていたのは、年齢がほぼ同じと思われる少年。鋭い目をし、微妙に不敵な笑みを浮かべている。その少年は無言で結城を見つめた後、口を開いた。


「お前のステータス、なかなか面白いな。運が9999もあるだなんて…チートでも使ってるのか?」


結城は少し眉をひそめる。この少年が何を言っているのか理解できなかったが、その言葉から、どうやら自分の能力に対して何かしらの反応を示しているようだった。


「チートなんて使っていないよ。死神になったのも偶然だし、ただの普通の—」


だが、少年は言葉を遮りながら、腕を構えた。


「どうでもいい。お前の運命が気に食わない。死神なんて力、許せるわけないだろう!」


少年が放った一言と共に、結城の周りに不思議な力が感じられる。瞬時に周囲の空気が張り詰め、結城はその気配を敏感に感じ取った。まるで何か強力な力が放たれる直前のようだ。


戦闘の始まり

結城は警戒し、ケルに一瞥を送った。ケルはその目に答えるように、低く唸り声を上げ、前足を地面に突き刺した。直後、少年が素早く突進してきた。


「くっ!」


結城はその動きをすばやく読み、反応する。運動能力が上がったことで、瞬時に体を横にずらして少年の一撃をかわすことに成功した。しかし、少年は一度攻撃を外してからすぐに次の一手を繰り出してきた。


「速い…!」


結城はその攻撃に合わせ、ナイフを手に取り、少年に対抗しようとする。しかし、少年はそれに負けじと空間を変化させるような技を繰り出し、結城の周囲に光の盾を形成してきた。


互角の戦い

「この程度で止まるわけないだろ?」


少年は片手を掲げ、その周囲に光の翼を広げてきた。結城はその動きに一瞬ひるむものの、すぐに冷静さを取り戻す。ケルが隙を与えず、少年の動きを牽制してくれている。その隙に結城は素早く反撃を準備し、急所を狙ってナイフを放った。


「今だ!」


結城の言葉とともに、ナイフは少年に向かって飛び、ぎりぎりで少年の肩にかすった。しかし、その一撃は思った以上に効果的だったらしく、少年は少しよろめきながらも、すぐに立ち直った。


「お前、なかなかやるな。」


少年は自分の肩をさすりながら、結城を見つめて言った。その目には興味と同時に、少しの畏怖が混じっているようだった。


「フッ、悪いな。でも、そろそろ終わりだ。」


少年がその場で魔法のような力を使おうとした瞬間、結城はその隙を逃さず、ケルが突進してきた。ケルの強力な足音が大地を揺るがし、少年はそれに気を取られて一瞬動きが止まる。


「いけ!」


結城はその隙にナイフを再び少年に向けて放ち、今度は確実に命中させる。少年は痛みでひざをつきながらも、最後の力を振り絞って結城を見上げた。


「お前、すごいな。」


戦闘後

結城は深呼吸しながら、少年に近づく。疲れた表情を見せながらも、少年は静かに笑顔を浮かべた。


「いや、素直に負けを認めるよ。だけど、これからはもっといい戦いをしようじゃないか。」


結城はその言葉に少し驚きながらも、微笑んで返した。


「もちろん。今度は敵じゃなくて、協力して戦おう。」


「今は決めれないけど、一応フレンドになる?」


「じゃあなろう。」


「黒鉄さんからフレンド申請が来ています。」


「黒鉄さんっていうんだ!僕のプレイヤー名は優希だよ!」


「ゲームを終わると時間は2時間経っていた。もう遅いし、きりがいいから寝るか。」と思い眠りについた。

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