エッセイ 晴田蕗

晴田蕗

雨だれ

引っ越し前日の深夜、雨だれの音がやけにひびく。ぴちゃん、ぴちゃんと、ゆっくりになったリズムを聞きながら寝返りを打つ。わたしの大学生活はなんて愚かなものだったんだろうと、ぼんやりかんがえる。また雨が強くなって、リズムが変わる。自由に、自然に、ゆったりと生きたい自分と、勉強しなくてはならない自分が交互に現れる。充電中のモバイルバッテリーは青く光って、雨だれは止まる。思考も、止まる。ゆったりと生きたい自分のほうで、止まる。まあいいか。とりあえず、明日は。窓に背をむけて、今度は自分の呼吸をきく。遠くでまだ、細かな雨がリズムを刻んでいる。

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エッセイ 晴田蕗 晴田蕗 @haruhuki

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