第2話 裏返る日常

 鼻先にくっついたベニヤ板から色々のものを吸い込んだ古い木材の匂いがする。僕は今、ようやくお馴染みと言えるようになった高校の教室の一角に居た。学校の机に突っ伏して顔を閉ざしている分、制限された視覚を埋め合わせるように他の器官が鋭敏になっている。夕暮れ時になり人気が失せた教室には蒸し暑い残暑の熱気が滞留している。ガラス窓で隔たれた外からは、運動部の掛け声やひぐらしのわびしげな鳴き声が混ざり合って聞こえる。上体を起こそうとしたが体に力が入らない。

「お〜い!」

 しばらくして廊下を蹴る音と共に、見知った声がこちらに急速に近づいてくる音が聞こえた。声の主は三谷梢。本当は僕の通っていた高校にいるはずのない人間なのだが、この時は気にも留めなかった。彼の元気で生気に満ち溢れた顔を一目見たいという思いに僕は支配されていた。

「学!ちょっとおきてくれよ!」

 教室の入り口まで来た梢は強い足音を立てながら僕の元まで走り寄ると、快活な声の中に焦燥の結晶質を混ぜた大声で僕の名前を呼びながら肩をゆすり始めた。

「わかった!わかった!」

 そう言って体を動かそうとしたが、まるで金縛りにかかったかのように体の中心が麻痺し、ぴくりとも動かない。

「なあ!起きろって!」

 その間も肩を掴み、体をシェイクする力だけが強まっていった。その力に呼応するように僕は懸命に力んだが徒労だった。

 幾分かの時間が経って、急にふっと体を揺する力が止んだ。綿飴が水に溶けてなくなるような、最初からその力がなかったかのようだった。その瞬間体に血が通い、体の操作権が戻ったのを感じた。僕は勢いに任せて立ち上がると腰と首を捻り、梢が立っているはずの後ろの正面を向いた。

 目の前に在ったのはやはり僕が望んだ梢の姿ではなかった。艶のあるはず学ランはボロボロだった。青白い顔に埋められた眼球は引き剥かれた状態で渇き、生気が塵となって消えたように唇は醜い青紫色に変色していた。僕は半年前に死んだはずの親友の骸と相対していた。夕日に照らされ蒸された空気からは死臭が漂っていた。


 不意に目が覚め、ベッドから飛び起きた。高まった心臓の脈動が不快な悪寒と冷や汗を伴って体を震わせる。

「はあ〜」

 僕は1人ため息をついた。この夢に起こされるのは何度目だろうか。鉛のように重い腕を動かして昨日コップに注いでおいてすっかり温くなった水を手探りで探し当て、一気に喉へと流し込む。いつも起床しなくてはならない時間まで、まだいくばくかの時間が残されていることをぼんやりと光る枕元の携帯電話が示している。僕はそれを確認して体を支える糸をぷつんと切るようにしてベッドへ身を投げた。でもすぐには眠れそうにない。微睡のなかで記憶が頭の中で渦を巻き始めた。最初に浮かんだのは、今は亡き親友が泥だらけのユニフォームで梅雨明けのマウントに立っている姿だった。


 梢はスポーツの才能があった。中学では野球部に所属しており、そこでは投手としての才能を発揮して弱小部だった部を県大会ベスト4まで導いた。僕と梢は家が近かったこともあって、よく自宅でゲームをしたり、放課後に駅前のゲームセンターに行って遊んだ。しかし、高校進学を機に彼は県外の野球の強豪校に僕は地元に進学校へ進んだ頃から、お互いに多忙の身となり、初めの頃はよく電話もしていたけどだんだんと疎遠になっていった。久しぶりに梢から電話がかかってきたのは高校1年の秋学期、まだまだ夏の熱気の名残が残る九月中旬のことだった。

 

『ちょっと部活の件で相談に乗ってほしいことがあるんだけど、話せない?』

 久しぶりの友人からのメッセージ、でも僕はそれを見てどうしようもなくイライラした。

『え?無理。今ちょっと模試で忙しいんだよ。』

 その日は朝から晩まで続く模試の日だった。その頃は中学よりも成績もずっと伸び悩んでいて、将来に対する不安や学校での立場がなくなるかもしれないという漠然とした危機感が心の余裕を食らい尽くしていた。なので僕は気に入らない人間に送るような、ひどくぶっきらぼうな返信をした。俺が書いた返事にアクションがくることはなく、数日後、友人の体は山中の山に吊るされているのが発見された。

 もしこの相談を受けて電話をかけていたら、話をしていたら、自殺を止められたのか。友人の自殺を引き金を引いてしまったのは物事の優先順位を見失った愚かな自分自身なのではないか。その考えに至った頃、僕はあの夢を見始めた。昔からなぜか夢を鮮明に覚えていることができた。というかそれが唯一の特技だった。そのせいで繰り返す夢はより深く心に刻まれ、朝早く目を覚ますことが増えた。勉強にはあまり手が入らなくなって現在は横ばいだ。

 気がつくと、携帯の時計は起床時間を示していた。そろそろ起きなけば。そう自分に言い聞かせ、先ほどよりもさらに重くなった気がする体を起こし、下の方から灯りが溢れる扉を開いた。


 階段を下りリビングへ向かうと、妹の智華が上にジャージ、下に体育着を着て、ソファーに腰掛け、天気予報が流れるテレビを無視して携帯を見つめていた。階段を降りながらその横顔をまじまじと見てみると、なんだか去年と比べて随分と髪が伸びたことに気がついた。バレー部に入る前から智華はベリーショートを好んでおり、どちらかというとボーイッシュな印象だった。でも今はロングと呼べる長さまで伸びており、焦茶色の前髪が画面を見つめる双眸を隠しかけている。

「おはよう。智華」

「おはようお兄ちゃん」

 妹と軽い挨拶を交わした後、昨日作っておいた目玉焼きとウインナーを電子レンジで温めて、そそくさと朝飯を食べ始める。

「勉強?近々試験でもあるのか?」

 白米をよそった茶碗を食卓に持ってくる時に、妹のスマホからちらっと英単語のクイズ形式のアプリが見えたので聞いた。

「ああ〜。来週英語の小テストがあるんだよね。まあ一応頑張らないとね」

「ついでに定期テストも頑張ってくれたらいいのにな」

「え〜、一言余計」

 妹は「その小言は聞き飽きました」と言わんばかりに目を細めてぎこちなく笑いながらこちらをみた。その後妹がこちらから目線を外しても、僕は自分の視界から彼女を離さずにいた。

 スマホから微かに正解と不正解を知らせるSEが溢れでているが、智華は意にも介していない。妹は光る液晶の中の単語問題の正否など心底どうでもよさそうだった。そんな自動機械のように携帯をいじる妹の目を見ていると、僕はなんだか怖くなり咄嗟に彼女が興味の湧きそうな話題を口から出していた。

「智華、昨日のネットの音楽番組見た?智華の好きな歌手が出てたよ?」

「あ〜、見た見た」

 朝の低血圧がもたらしてのか、ローテンションのままのダウナーな妹の声が聞こえてきた。妹は音楽が好きだ。以前に二人でカラオケにいったことがあったが、素人の自分でもわかるくらい上手く歌っていたのを覚えている。なんというか歌が上手な奴は歌い出すと声が変わるんだよな。妹はその典型で、普段のコロコロとした可愛げのある声から打って変わって、歌う時は少し声の調子が下がりどちらかというと透き通ったような声に変わる。

「やっぱり彼女のギターはいつ聴いても心が洗われるね」

 そんな妹は決まってある歌手の曲ばかり聴いているらしい。それが『lha saラサ』である。詳しくは知らないが顔を隠したシンガーで、アコースティックギターを用いた演奏を行なっているらしい。妹は特にそのアーティストが演奏するギターに惚れ込んでいる。今はあまり乗り気ではないのか体調が悪いのか、話に食いついてこなかったけれど。

「智華、お前昨夜見た夢の内容覚えてるか?」

「どうしたの突然」

「いや、なんとなく」

 そう。別に聞く必要のない質問だった。ただもう慣れたと思っていたのに今日の梢の夢は特別に頭から離れなかった。それでふと気になってしまった。他の人間が普段どんな夢を見ているのか。

「う〜ん。最近は悪夢、いや、実はあんまし見ないんだよね、夢。だからそもそも昨日はわからないかも」

 後になって考えてみれば妹の言動には違和感があった。僕はこの時「そっか」という言葉で流したが、もうすこし質問を深掘っておくべきだったかもしれない。

 ふと前を見るとテレビは天気予報から、昨今の若者の自殺者増加に関するニュースに変わっていた。俺はさっき見た夢がまた首をもたげた。僕はチャンネルを変えようとリモコンを探そうとしたが、それを察したように妹は、近くにあったであろうリモコンで電源を消してしまった。

「じゃあお兄ちゃん朝練行ってくるね」

「おう。頑張れよ」

 妹はいつも着けているイヤホンを耳にはめると、玄関に続く引き戸を開けバレーボールが6つほど入った大きなバックを抱えた後、ゆっくりとした足取りで出かけて行った。時計を見ると出発時間まではまだ時間があったので、妹に習って少僕もすこし携帯をいじった。

 出発直前に水を飲もうと台所へ行くと、古びたオーブンの上に目玉焼きとソーセージの載せられた平皿が目に入ってきた。それを見て僕は初めて妹が朝食を食べずに朝練へ行ったのだと知った。


 いつもよりも早めに駅へ向かい一番右端の席に座ってから10分後、機械音と共にドアが閉まり、列車はゆっくりと次の駅に向けて動き出した。もう5月なので、ついこの前まで山の後ろに隠れていた太陽が電車の中に光を放ち、乗客の顔を照らしている。乗車駅が始発なので人はまだまばらで、圧迫感はない。この後数十分は電車に揺られていないといけないので、いつもならさっさと端の席の壁にもたれかかって寝てしまうのだが、今日はいつもみる夢についての考えがなぜか頭にこびりついて消えなかった。

 週に1回ほど、僕はいつも梢の夢を見る。その時は決まって僕はどこかに座っている。公園や学校のベンチの場合もあるし、今日のように教室の机に座っていることもある。始まり方はまちまちでいつかしたような雑談の場合もあるし、今日のようにいきなり梢が現れる場合もある。しかしいずれの場合でも僕はその時どうしても生前の梢の顔は見えない。なぜか僕は夢の中で目線を彼の首から上に上げることができないからだ。見ることができるのは夢の最後に現れる、すでに土気色になった顔で腐臭を漂わせた梢の死相だけだ。その顔を見ると僕は目を覚ます。これの繰り返しだ。

 僕はこの夢を見る理由について調べ、考えを巡らせたが腑に落ちるような答えは得られなかった。そこで僕はこれを自殺した梢が見せる罰なのだと思うようにした。そうすれば理不尽な睡眠に行き場のない怒りを覚えることもないし、何より親友を殺したかもしれないという罪悪感を紛らわすことができた。この夢を背負って一生を生きてゆこう。僕はそう決意していた。

 高校は家から20分と少し電車に揺られた後に同じだけの時間をぼとぼと歩いてからようやくその姿を表す。そこそこ栄えている最寄駅とは違い、校舎は郊外の丘の上に立っている。高い建物からならどこからでも海が望める我が故郷、御空原市とは異なり眼下には淡い灰色の街並みが広がっている。

 いつものように革靴の膠が腐ったような異臭を放つ下駄箱を抜け、3階にあるつい一月前に割り当てられた教室へ行くとそこには奇妙な光景が、といったようなこともなく普通に朝のホームルーム前の騒がしいがどこか気だるげな空気が満ちているばかりである。僕の名前、吾川という名字は相川や青木が来る場合を除けば大抵出席番号の筆頭である。そのため大抵は教室を上から見た時に左上ないしは右上になりやすいのである。今年も高校2年のクラス替えの結果も御多分に洩れず前者であり、僕は前側の扉を潜り抜け窓側最前列の席へ座った。

「このまえオーブンキャンパスに行ったんだけどさ!そこですごい人に会っちゃったの!」 

 バッグから今日行われる単語テストへの抵抗を行おうと思い単語帳を開いた時、朝のだるさの一切を感じさせない快活な声が真後ろからよく通る声で2人の会話が聞こえてきた。話していたのは理系大学志望の女子2人でそのうちの1人が化粧品の開発を夢見ていておりなんでもその研究ができる学科のオープンキャンパスへ行ってきたらしい。そのことは前の日に行われていた会話でなんとなく聞き及んでいた。

「なになに?すごい人ってどんな人?」

「えっとね〜。学校にヤクザがいたから話してきた!」

「え?」

 さっきまで目をキラキラさせながらきいていたもう1人の女子は一瞬で固まった。無論僕も。内容なんか気にしてないのに淡々とページをめくっていた指まで一瞬停止した。

「え?本当にどういうこと?」

 脳みそが機能を停止した瞬間我に帰り、単語帳に視線を戻したが後ろからは困惑を纏った言葉が聞こえてきた。

「だからヤクザだよ!全身黒服で筋骨隆々、おまけにスキンヘッドにサングラスときたもんだ。これは間違いなくすじもんでしょ?ほら写真もあるよ?一緒に撮ってもらったの」

「どれどれ見せて?」

「俺にも見せて」

「わたしにも!」

 写真の存在を匂わされては皆好奇心を抑えることはできず、またたくまにオープンキャンパスへ行った女子の周りには人だかりができた。正直見に行きたかったが、多重となった人の壁を見て無気力が勝ってしまい持ち上げた腰を下ろした。結局全体の5分の4くらいがその女子の元へ集まったが僕を含めた数人が机と睨めっこをしたままだった。その数人の中に、僕と同じぼんやりとした目で本を眺める奥村凛も含まれていた。


 奥村凛、僕が高校に入った後に出会った最初で唯一の友人と呼べる男。梢が死んだ後友達など作る気にもなれず、必然孤立していた僕に話しかけた物好き。彼は他の人間とは違っていた。高校一年生には不相応な難解そうな文庫本をいつも開いていて、なにかを達観したようにいつも独特の笑みを浮かべているのだ。テストでいつもより悪い点数をとっても、どしゃぶりの帰り道で猛スピードの車に僕共々水を引っ掛けられてもいつもあっけらかんとしていた。彼の心の中を景色で表すのなら、きっと陽が差し込む青の野原であると考えたこともある。

 だが今日の彼はいつもの余裕がないと言うか、無表情というかそんなよからぬ印象を受けた。

「なあ奥村、お前ちゃんと寝れてるか?」

 4時限目の数学の授業が終わり、お昼休みの時間になった時に僕は奥村に話しかけた。言い忘れたが僕と奥村の席は隣同士の関係である。

「吾川も大概だな。目の下に隈ができてるぞ」

 そう口元を歪ませながら学食で買ったであろうしょぼくれた惣菜パンに齧り付く奥村は言った。もともとあまり元気いっぱいなやつというわけではないが、普段はもう少し元気に僕とアニメの話をして盛り上がったりしている。なによりもいつも自作しているという二段弁当がみあたらない。その代わりに口に入れているものといえば前述した冷めたホットドッグだ。

 「いや、僕はいつものことだし。本当にどうした?なんかあったのか?」

 割と真剣な口調で言うと、奥村は咀嚼をやめて机の端においてある大きめの水筒に手を伸ばし、その中身を飲み始めた。その時間がやけに長かったのを覚えている。

「吾川、このあと図書室に行かないか?」

 奥村は僕の質問に答えるような真剣な顔をしてこう答えた。その言葉は僕の質問に直接的な回答とはなっていなかったが、彼の口ぶりや表情から誠実な回答がそこで為されることは想像ができた。

「俺、大学行けないかもしれないんだ」

 ほとんどつかわれていない旧校舎にあるせいで多くの生徒にその存在を忘れられている図書室で、奥村はそう一言だけ告げた。この高校は腐っても進学校、そこに通う頭脳明晰な彼にとってそれが何を意味するかは僕には痛いほど伝わってきた。

「理由を、聞いてもいい?」

 彼の心をこれ以上傷つけないよう慎重に質問をした。彼はいつもとは違う自嘲的な笑みを浮かべて答えた。

「俺の家、飯屋をやってるって前言ってたよな?それが潰れた。まあ俺らが中学の時に流行った感染症のせいでずっと危うい状態にはあったんだけどな」

「親父もずっと無理してたみたいで昨日倒れた。精神的なストレスと過労だって。しばらくは貯金やら保険金やらで保つかもしれないが母の収入だけじゃとても賄えない。弟も2人いる。だから言われたんだよ。『ごめん。高校卒業したら一緒に働いてくれって』母親に泣きながらさ」

「その時俺は何もいえなかった。中学からここまで勉強してきた。もっと勉強したかった。本もたくさん読みたかった。でも無理そうなんだ。なあ吾川、俺はどうすればいい?」

 どうすればいい?なんと難しい質問なのだろうか。心配半分興味半分で聞くべきではなかったという後悔が心の中で氾濫して意識が沈みそうだ。僕は長い時間ただ黙って彼の目を床に伏せた悲しげな顔を見ていることしかできなかった。そのうち奥村は僕の肩を両手で包み込むように掴んで笑った。

「まあ人様のお家事情なんて話されても困るだけだよな。忘れてくれ。でもありがとう。話せて少しは楽になったよ」

 それだけ言うと、奥村は僕の肩から手を離し、早足で図書室を出て行った。そうして埃が舞う大部屋に僕だけが残された。なにもできなかったどころではない、のっぴきならない問題を持つ友人の彼に対して僕は気の利いた言葉一つかけてやれなかった。自分はこんなに弱い人間だったのか。そんなささやかだが鋭い自虐が胸で鼓動する心臓をちくりと刺した気がした。


 5限の科目は音楽、内容はミュージカルDVDの鑑賞である。音楽の教師は変な人で教室を上から見た時に黒板側ではなく、後ろ側を上にして右から縦に生徒を配置する形式だった。そのため僕は右後ろの最後尾席で小さな画面を見ることになった。内容は全然入ってこない。理由は音も画面もちいさすぎること、図書室での出来事が頭から離れないこと、そして慢性的な寝不足だった。

 鑑賞の時間だしテレビの光を際立たせるために教室も暗い、少々寝てもバレないだろう。感想シートには後で適当にネットで調べたことを書けばいい。そう思い僕は紺色のブレザーを脱いで枕がわりにして机に突っ伏して睡眠を始めた。こんな状況で取る眠りなど、質の悪い浅い微睡で負債の解消にはならないと思っていたが今日は急速に眠気に襲われた。異常と呼べるほどに。

 人生には突然の出来事がある。というかほとんどがそうだ。そしてその大半は吉報ではなく凶報だったりする。しかし、今から起こる出来事はそのどちらでもなかった。言うなれば怪奇。この世の不思議な出来事、奇跡をいくら足し合わせても足りないであろう不可思議に僕は足を踏み入れようとしていた。

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