I3 『漆黒ノ翼ヲ掲ゲル覇者、満月ニ降臨ス』

 客席がざわざわしている。いつもの興奮とは違い、困惑しているといったようすがビンビンに伝わってくる。

 それもそのはずだ。

 あまりにゴスロリすぎる衣装で来たものだから、今までついてきたファンたちがドン引きしているのだ。

「冥府ノ裁定者ことリンカ。信者たちよ刮目せよ!」

 リンカちゃんは片手を広げた。

「残酷冷血大公爵ことアカネ。跪け我が信徒たちよ!」

 アカネちゃんは首筋を見せつけた。

「吸血鬼赤色大真祖ことアレン。無限の闇の中へ! 今宵を彩るはあかき月光! 裁きのときよ来たらん。信徒たちよ、汚辱の神の蹂躙じゅうりんゆるすな! いまこそ我らにしたがえりぃぃぃ!」

 私は十字を切った。

「三人揃って」声を合わせた。「『漆黒ノ翼ヲ掲ゲル覇者、満月ニ降臨ス』

なりぃ!」


 お客さんたちはドン引きして帰っていった。

 ライブもあまり盛り上がらなかった。

「急な路線変更はだめだな」

 アカネちゃんがそう言うまでもなく、私たちはグループ名変更を余儀なくされた。


・次に進む

https://kakuyomu.jp/works/16818622170743442225/episodes/16818622170747590927

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