E1 話がしたい(2)

 パフェというものは、たくさん食べられるものではない。ほとんどクリームとソースだと思っていたけど、あのコーンフレークが厄介なのだ。溶け出してきたアイス、それからソースを吸収してお腹の中で膨れ上がる。二つ食べることにはもう満腹感を感じていた。三つも平らげたのはリンカちゃんだけだった。


「……リンカはミナミちゃんが亡くなったのを受け入れられていないのかもしれない」

 リンカちゃんはぐすっと鼻を鳴らした。本音を語りはじめた。きっと糖分をいっぱい摂って気持ちが落ち着いたのかもしれない。私は耳をそばだてた。

「四人で練習するところなんて想像するだけで恐ろしい……。ミナミちゃんがいないことがずんって重くのしかかってしまう。そんなのはイヤ……」

「アナタがひとり嫌な気持ちでいるのは別にいいんだけど、どうして私たちの活動まで邪魔しようとしたの?」

 イクミが言った。

「『野生のポニー』っていう名前だけは、使ってほしくなかった。だって、『ポニー』はリンカのことだから」

「そうなの!?」

 イクミちゃんは声を張り上げた。

 リンカちゃんはうなずいた。

「今の事務所のオーディションを受けたとき――どっちも小学五年生だった――初めてミナミちゃんに会った。ミナミちゃんは私のことをポニーちゃんって呼んでくれた。ポニーの描かれたTシャツを着ていたからだと思う。

「その後、同じ事務所になって、グループを作ることになった。そのとき『ポニー』って名前は入れたいねって話になって」


 思えば、リンカちゃんはグループ最古参のひとりだった。結成当初――つまり十年前から『野生のポニー』のメンバーだったのはミナミをちゃん除けば、リンカちゃんだけだったのだ。

「私のいないところで、『野生のポニー』の名前は使ってほしくない。お願い……」

 立ち上がりリンカは頭を下げた。


「リンカちゃんの思いはわかったよ。どうしてグループを解散してほしいのか。どうして『ポニー』の名前を使ってほしくないのか。ねえ、イクミちゃんはどう思う?」

「リンカの気持ちは理解した。それなら解散してもいい。いちからやり直すのよ」

 イクミちゃんは言った。


「そうすることは簡単だよ。すぐにでも解散できる。憧れのステージだって諦めることだってできる。でも、リンカちゃんはそれでいいの?」

「えっ!?」

「『怖いから』っていう理由でグループを解散させて、それで後悔しない?」

「それは……」

「私……私はね。一度ライブから逃げたことがあるの。本番前、緊張に耐えきれなくて。その後すごく後悔した。そんなことをするとね、自分は負け犬だって、自分で自分のことをそんなふうに考えちゃうの。

「もし……もし、ミナミちゃんが拾ってくれなかったら私はずっと自分に自信がないままだったと思う。リンカちゃんには……同じ思いをしてほしくない。ねえ、グループに戻ってきてよ。四人でもいい。四人で続けようよ!」


 リンカちゃんの返答は。


γ1.四人で続ける

https://kakuyomu.jp/works/16818622170743442225/episodes/16818622170745263962

γ2.解散させる

https://kakuyomu.jp/works/16818622170743442225/episodes/16818622170745324289

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