黒歴史を知る女
かげやま あづさ
第1話
斎藤
昼は弁当屋、夜はコンビニで働いている。
7年前に離婚した夫は、浮気相手と再婚して養育費を払わない。
噂では子供ができたらしい。愛美のことは忘れたようだ。
弁当屋もコンビニも、時給は最低賃金だ。
給料と仕事内容は見合ってない。仕事量が多すぎる。
でも愛美が面接で合格したのは、この2店だけだ。
スーパーのレジも、ドラックストアの店員も、
ファミレスのウエイトレスも落ちた。
愛美は私立の女子大を卒業後、事務機器メーカーの総務部に就職した。
研修が始まると、同期の男から熱心に口説かれた。
後で知ったが「女子大卒を」「他の男の手垢が付く前に」嫁にしたかったそうだ。
愛美は早く専業主婦になりたかったから利害は一致した。
23歳で結婚し、24歳で出産、30歳で夫に浮気され、31歳で離婚した。
社会人経験が少なく、資格も特技もない愛美が働ける場所は限られていた。
弁当屋とコンビニでクタクタになって帰宅しても、家事が山のように待っている。
夫を恨んで泣き叫んだ夜もあったが、今の愛美には楽しみが二つある。
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